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評者◆秋竜山
正しい記憶術、の巻
No.3034 ・ 2011年10月15日




 自分の脳を信じなくて、誰が信じるのだ!! と、いうのも変な話だ。だから、私は、自分の脳を信じているのです!! も、変な話である。なんて、考えながら読んだ本が、池谷裕二『脳はなにかと言い訳する』(新潮文庫、本体五九〇円)である。
 〈脳には不思議なことがたくさんあります。ただ、はっきりしていることは、「意識できること」よりも「無意識のまま脳が実行していること」のほうがはるかに多いということです。日常生活に思いを巡らすとき、もちろん意識にのぼることしか意識できませんから、意識で感知しえたことのみが、あたかも「自分のすべて」であると勘違いしがちです。でも本当は、無意識の大海原にこそ、脳の大部分の活動が潜んでいます。〉(本書より)
 脳の活動はほとんどが無意識であるという。と、いうことは、私は無意識の中で生きているということか。もちろん、意識しての活動もあるだろう。それでも、「すみません、無意識の中でやってしまったことですから」「なんだと、コノヤロー、無意識の中でしでかしたんだと!!」。相手のクルマに、自分のクルマをぶつけてしまった。それが、無意識の中でか。だからといって、「すみません、意識の中でやってしまったことですから」も、変な話である。どっちも脳の責任か。「まちがって……」とか「ぼんやりしてまして……」とか、理由はいろいろだ。どうも、私のたとえだと本書とズレてしまうようだ。
 〈意識が〝意外性〟の反映だとしたら、面白い側面が見えてきます。〉(本書より)
 ――お腹が空けば記憶力が高まる。という項目がある。
 〈大自然のなかで生活する動物たちは、常に生命の危機にさらされている。危機を効率よく回避するためには、敵に遭遇した状況や獲物にありつけない道をきちんと記憶しておく必要がある。ヒトの脳にもこうした性質が残されているため、危機感を脳に呼び起こせば記憶力が高まる傾向がある。(略)空腹もまた生物にとって危機である。(略)腹が減ると食を欲するようになるのはこうしたしくみによる。(略)こうして見ていくと、栄養は体に必要だとはいえ、食べ過ぎは必ずしも脳にとってよくないことがわかる。〉(本書より)
 つまり、たらふく食べて腹がふくれていては、脳は記憶する力もなえてしまうということ。空腹にして、「サァ!!記憶するぞ!!」というのが、正しい記憶術ということらしい。たしかに、そーかもしれない。満腹になれば記憶どころのさわぎではなく、ただ、眠くなるだけのこと。これも脳の働きの一部ということになるのだろうか。
 〈空腹な状態のほうが、「頭が冴える」という話は理に適っています。人間は、ヒトであると同時に、やはり動物です。「お腹が空けば記憶力が高まる」という無意識のレベルで作動するという古典的な動物的原理は、今でもヒトに明確に残っています。(略)ヒトの生理機能の大半は動物と共通しています。〉(本書より)
 そーいえば、腹がへって、ひもじかった時の記憶は残っているが、満腹の時の記憶って残っているかしら。子供の時、母のつくった「おはぎ」を十二、三個たべて、あおむけにひっくりかえって、「くったー」と叫んだ記憶がよみがえった。







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