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評者◆秋竜山
陶酔しきってナレーション、の巻
No.3033 ・ 2011年10月08日




 文庫本とポケットは切っても切れぬ縁がある。私が文庫本を、こよなく愛するのも、ポケット版であるからだ。早い話が、持ち運びが便利だということだ。値段が安い、ということもあるが、あの本のサイズが最大のミリョクだ。ところが、ブ厚い文庫本は、どーだろうか。あまりの厚さにポケットに入らない。果して、文庫としての役わりを果してくれるか。仲村ゆうじ著、歌の手帖編『歌謡・演歌・ナツメロ ナレーション大全集』(マガジンランド、本体二〇〇〇円)。最新カラオケ必須曲、全2230曲を網羅。片手で持っても重い。サア!! これで、どーだ!! というブ厚さだ。1032ページ。ポケットどころの騒ぎではない。これを外へどーやって持ち出すかだ。まさか、三つ四つに、やぶいて切りはなしてしまうのも、もったいない!! ではないか。
 〈歌謡・演歌ナレーション全1872曲(昭和35~平成23年)〉〈不滅のナツメロ・ナレーション全358曲(明治・大正~昭和34年)〉《巻末付録》〈ナレーション作りのための「演歌ことば辞典〉。〈演歌ファン、カラオケファン、そしてナレーションファン待望の「ナレーション大全集」をここにお届けいたします。〉(本書より)
 待ってました!! 私にとって歌とは、泣くことである。笑いながら唄うなんて、聞いていて腹がたってくる。「ふざけている!!」ように思えたり、聞こえてくるからだ。歌の本質は「泣きながら」であるだろう。歌の歴史は、泣きの歴史でもある。歌の泣きを盛りあがらせるために、ナレーションがある。カラオケは自己陶酔のためにあるものであり、もしかすると、歌そのものよりもナレーションのほうが自己陶酔できるものではないだろうか。
 〈いかに唄い手に気持ちよく本編の歌に入ってもらうか。その一点こそがカラオケナレーションの立ち位置であり、原点そのもの。そうあらためて考えれば、いかに語り芸とはいえ、芸であって芸に溺れず、自己陶酔することなく、ゆめゆめ心の目線を観客と唄い手の双方に向けておくことを忘れてはならないでしょう。〉(本書――ナレーション語りのポイント)
 ちょっと待って下さいよ!!〈自己陶酔することなく〉と、ありますが、どうして自己陶酔がいけないのでしょうか。ナレーションを語る時、自己陶酔しなかったら、まったく意味ないだろう。聞く側も、自己陶酔しながら語られるナレーションに、こっちまで泣きたくなってくるという陶酔をいただくのではないだろうか。
 〈何度夢に見たでしょう/愛する人に見てもらう/幸せ化粧のうれしさよ/あきらめかけた女の春を/くれたあなたのその胸で/泣かせてください/きょうだけは。おんな孤独の~(化粧川 角川博)〉(本書より)
 カラオケでは、誰も聞いてはいない。歌もナレーションも。そんなものだ。だから、こそ、自己陶酔を思い切りできるのだ。
 〈別れの橋を渡ったら/二度とすがれぬ恋だから/泣かせてください思いきり/あああなた/あなた最後にもう一度/愛しい腕のその中で。聞かせて~(儚な川、大月みやこ)〉(本書より)
 本書を手に、誰もいないところで、ナレーションを声に出して語る。陶酔しきって。







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