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評者◆トミヤマユキコ
非ヲタでも気になる! アキバで働く女社長「もふくちゃん」のこと。
日本の若者は不幸じゃない
福嶋麻衣子・いしたにまさき
No.3031 ・ 2011年09月24日
▲【もふくちゃん】1983年生まれ。本名は福嶋麻衣子(ふくしま・まいこ)。「もふくちゃん」という通り名は、東京藝術大学在学中に自由課題として行ったネット生放送「喪服の裾をからげ」をその由来とする。藝大卒業後、アキバ系カルチャーへと徐々に接近し、現在はアイドルが働くライブ&バー「ディアステージ」およびアニソンDJバー「MOGRA」を運営する株式会社モエ・ジャパンの代表取締役を務めている。
アキバを主戦場とするアイドルの呼称が「地下アイドル」から「ライブアイドル」に変わりつつあるのをご存じだろうか? この名称変更は明らかにアイドル大陸の地殻変動を意味するものだ。単に「地下」って名前がなんだか後ろ暗くて使いにくい、とかそういうことではなくて。 おそらくアイドルの属性を「地下/地上」によって区別する時代は終わりを告げ、これからのアイドルは「ライブ/非ライブ」という新たな基準によって価値づけられることになるだろうし、アイドルにおける「地上/地下」関係、つまり上下関係が相対化されることは「メジャー/インディーズ」の関係にも少なからぬ影響を及ぼすだろう。 「地下×インディーズ」だからダサいとか「地上×メジャー」だから最強とかいう価値観自体がすでに賞味期限切れなのだ。どんなフィールドにいるアイドルも、等しくファンに支えられ愛でられる可能性を秘めている。アイドル百花繚乱とも言えるし、アイドル戦国時代とも言える。つまり、いまのアイドル業界はとても面白いってコトです。 このような状況下で、もふくちゃんというアキバ系女子(弱冠28歳!)が展開している「学園祭ビジネス」は、昨今のアイドル大陸における地殻変動に対するたいへん強力な応答力を持つものだ。 彼女の著書『日本の若者は不幸じゃない』(いしたにまさきとの共著、ソフトバンク新書)によれば、学園祭ビジネスとは「送り手から一方的に何かを売ったり、与えていくのではなく、お客さんも参加者として全員で一緒に何かを作り上げていくような感覚」で行われるものであり「裏側をすべて見せる〝逆ディズニーランド”」なのだという。 また、スタッフの女の子がお客さんに実年齢や私生活での苦労話をしてしまうというエピソードからも、店の独自性が窺える。幻想を最小限にした分、幻滅もまた最小限に抑えられるというワケだ。広告代理店の総力を結集してファンをアイドルとの疑似恋愛へと向かわせるといったやり方ではなく、客であると同時にスタッフでもあるかのような「内輪感」によってファンを楽しませるのが学園祭ビジネスの醍醐味。 リアルとファンタジーのほどよい融合は、そこで働く女子たちにとっても心地よいものであるはずだ。アイドルが生き様を隠さなければならないなんてルールはとうの昔に無効化している。わたしだって、細かい設定を頭にたたき込んで、完璧なレプリカントよろしく会話し、振る舞わなければならないメイドカフェよりは、ディアステージで汗水垂らしてアイドルしてみたいと思うもん。 AKB48が「会いに行けるアイドル」を標榜しながら、その爆発的な人気によって「なかなか会えないアイドル」化し、結局テレビで観るしかなくなっていく中で、ライブアイドルたちが歌って踊って接客もしてくれるお店「ディアステージ」は、まさに「終わらない学園祭」の開催地なのである。 ちなみに「終わらない学園祭」とは、劇場アニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』が元ネタ。もふくちゃん自身も「当時、終わらない学園祭なんて現実になかったから、『ビューティフル・ドリーマー』という映画は作られたのでしょう。でも、現実にあります。それが学園祭ビジネスなのです」と述べている。 この作品において、夢の世界で永遠にくりかえされる「学園祭の前日」を生きるラムちゃんや諸星あたるたちが「浦島太郎」として描かれていた事実からすれば、学園祭ビジネスのもたらす喜びは、現実世界を離れることで享受できるということになる。 だとすれば、懸念すべきはただひとつ……学園祭ビジネスに「死ぬまで竜宮城から出ない」あるいは「現実世界に帰還した後も絶対に玉手箱を開けさせない」手立てがあるのかということ。 ディアステージのような居場所を見つけることで著書のタイトル通り「不幸じゃない」と言えるようになった若者が、中年、老年になった時に、学園祭ビジネスは変わらぬ応答力を持ち得るのだろうか。彼女の「日本の若者は不幸じゃない」という宣言が、時の流れとともに「元若者」になった者たちを受け入れるのかあるいは排除するのか? もふくちゃんの描く未来予想図が気になって仕方ない。 ライター(@tomicatomica) |
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