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評者◆秋竜山
さよなら、小松左京さん、の巻
No.3031 ・ 2011年09月24日




 偉大なる我らの小松左京さんが、いなくなってしまった。なんとも淋しい限りだ。小松左京『SF魂』(新潮新書、本体六八〇円)が新刊コーナーに並べられてあった。「アレ、また同じ本が出たのか」と思ったら、2006年・発行とあった。だったら、家にあるはずだ。でも、無いにひとしいか。どこにもぐり込んでいるかわからないということは、手に取ることは不可能だということだ。だから、又、買い求めた。新刊本の中に他の新刊に負けぬ堂々とした新刊としての光を放っていた。
 〈私がSF作家としてデビューしたのは一九六二(昭和三十七)年、三十一歳の時である。以来、三十代はひたすら書き続け、四十二歳で「日本沈没」ブームに揉みくちゃになり、五十二歳でSF映画を作り、六十三歳では阪神大震災にも遭遇した。気が付けばSFと関わっておよそ半世紀。日本SF黎明期を共に過ごした作家仲間は次々と鬼籍に入り、いつのまにか私が長老である。まさかこんな歳まで生きるとは思っても見なかった。〉(はじめに)
 小松さんは「SF界のブルドーザー」と呼ばれていた。あの頃はSF一色であった。少しばかりの勢いがあったナンセンス漫画も、私が「ナンセンス漫画は……」なんて、いうと、編集者が「SFの中に入るでしょう」なんていった。だからといって、私は「SF漫画を描いています」とはいえず、「ナンセンス漫画……」と、複雑な思いでいたものだ。小松さんの「架空インタビュー おしゃべりな訪問者」という作品のイラストを描かせていただいた。ハチャメチャなイラストにしてください!! なんて、編集者がいうものだから、調子にのって、小松さんを漫画キャラクターにして空を飛ばせたりしたものであった。それ以上に小松さんも調子にのった作品を毎月雑誌に発表したものであった。二、三年前「小松左京マガジン」であの小松さんのキャラクターを表紙に使いたいという話があった。小松さんを、これ以上くずせないという画であるから、という理由だという。「小松左京マガジン」では、毎号、いろいろなイラストレーターによる、これぞ小松左京だ!! という小松さんが描かれている。
 〈SFはよく荒唐無稽と言われる。しかし、文学とは元来が荒唐無稽なものだ。フィクションの語源はラテン語の「嘘」。そこにある素材を使って、面白い嘘をつくるのが文学だ。その王道は、合理主義や自然主義の芸術ではなくて、メルヘンやファンタジー、口承文芸も含めた古い古い伝統文学の中にある。(略)サイエンス・フィクションというとおり、重心はあくまでフィクション。科学を使った嘘であり、科学まで相対化する文学ということ。そして時々、嘘から実がでる‐。〉(本書より)
 なにからなにまで、すべてSFである。人生もSFかもしれない。漫画家としては漫画びいきのようなものがあって、「なにからなにまで、すべて漫画である。人生も漫画かもしれない」と、いいたいところである。が、「SFである」と、いったほうが、力強さがあるかもしれない。







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