書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆鴻農映二
遅れてきたSM――女流、チョン・ジアの芸術
No.3030 ・ 2011年09月17日




 一枚の写真――。
 ガラス製の、壺といってよいくらいの大きさの円形の瓶に、裸体の女が腰かけている。
 後ろ向きの姿態だ。スーッと、滑らかに伸びたウエストからヒップへの曲線。
 後ろ髪が、中心で纏められ、李朝時代の女性を想わせるように、胴体の中心くらいまで届いている。髪は、二つ編みを二つ合わせた四つ編み。この国の時代劇に出てくる髷だ。
 壺に座っても、安定しないのか、右腕が壺の上部を押さえている。そして右足の踵は、床にくっついているのに、左足の踵はすっかり浮き、爪先で床を押さえている。
 不安定な姿勢が色っぽい。そして、背中の中心からずーっと下に降りた部分。皮膚の色より、少し黒ずんだ部分、アヌス周辺の独特な色彩、翳りが、フェチストの関心をそそる。
 ガラスの壺の中には、十匹のウナギが泳いでいる。そこからすぐ、上の穴に潜り込みそうだ。
 そういえば、似たような映像が、日本のSM映画にあった。
 その動画(下から火が焚かれ、パニック状態になった魚が、上の穴に逃れようとする)とは違い、こちらは一枚の静止画だ。しかし、そのエロティシズムは90分の映画に匹敵する。
 全体的に痩せている割には、臀部の豊かな、つまり、感度の良さを感じさせる体だ。
 この一枚の写真さえあれば、一生、女房をめとる必要などないくらい刺激的だ。美術情報誌で見つけ、あわててギャラリーを訪ねた。そこには女にお仕置きのポーズで、スパンキングされる男の写真(尻は、赤く腫れ上がっている)、それと、竹藪の中で、四肢を縛られて横たわる男の姿があった。
 そしてまた、マゾ男を踏みしめる鉄製のハイヒール、ビーズ状の玉でこしらえた九尾鞭、中世ヨーロッパの拷問風景を描いた仕置き板が展示されていた。遂に、この国にも、こういう芸術家が現れた。
(韓国文学)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約