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評者◆池田雄一
ユートピアを抱きしめて――3・11以前に書かれた、「中央」と「地方」の関係を「内部植民」という観点で捉え直す書
「フクシマ」論――原子力ムラはなぜ生まれたのか
開沼博
No.3030 ・ 2011年09月17日




 ユートピアというのは、その定義において純粋な言語的構築物であり、その意味で仮象と呼ぶ他はないものである。そのユートピアを地上に実現させようという運動は、したがって歴史を消去しようという傾向をおびることになる。
 八〇年代におきた反原発運動は、いわば負のユートピア思想とでもいうべき「終末論」のビジョンにもとづいてなされてきた。それは「放射能」という存在の特性がそうさせたという側面もあるが、また日本が「被爆国」であるという要素も無視できない要因である。さらには、七〇年代からおきた「偽史運動」の流れも大きく影響していたものと思われる――この運動自体は九五年の地下鉄サリン事件によって消滅することになる。
 そもそも原子力という存在自身が、戦後の日本におけるユートピアへの憧憬を象徴するものであった。二一世紀において、それは九〇年代後半にエコロジー思想とむすびつくこととなった。したがって、八〇年代の反原発運動は、ふたつのユートピア像のせめぎ合いであったと解釈できる。結果として、原子力をめぐっての歴史が消去され、それにかわって運動当事者の「推測」や「想像」が因果関係の穴を埋めることとなった。
 原子力を推進する者も、反対する者も、その運動のさなかでは圧倒的な現在のみが反復され、過去も未来も...







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