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評者◆鴻農映二
新作ホラー映画『猫』を観る――ホラーなのに、「あまり恐がらなくて済んだ」という妙な満足感を覚える作品
No.3029 ・ 2011年09月10日




 日本で猫の鳴き声は、「ニャオーン」だが、韓国では「ミャオン」だ。猫は、日本語で「ネコ」、韓国では「コヤンイ」だ。どうして、こう名称に距離があるのだろう? 擬音語は近いのに――。
 『猫』を観た。深夜のFMラジオで、毎晩、この宣伝をしていた。その「刷り込み」もあって、金を払っても観たかった。
 金を払って、観た。新村のアート・レオン。いちばん、よく足を運ぶ映画館だ。『日本沈没』も此処で観た。この映画には、後の東北巨大地震を予告するように“仙台沖”のシーンが出てくる。まさか、数年後、テレビのニュース映像で、似たような光景を確認するとは、想像もつかなかった。
 『猫』は、ペットショップで働く若い女性が主人公。彼女は閉所恐怖症の持病がある。その発症の原因は明かされない――(ここが、本作の欠点だ。上映時間が一時間半程度だから、もっと説明して長びかせてもよかったのではないだろうか?)。
 それに、あまりにも早く、「恐怖の正体」というか、「お化け」を登場させてしまう。ホラー映画には、充分な貯めが必要で、それが徐々に高潮して、「ワッ、出たァッ!」の興奮に辿りつく。エッ!! もう出たのっ!? の、シラケた気分を、最後まで引きずってしまい、そーか、こうなって、こう、つまり、可哀想な霊を、主人公が自分の体験に重ね、癒してあげて、成仏する話か、そうか、そういうことか、で納得する。
 この映画の恐いところは、閉所恐怖症のヒロインが、エレベーターに乗れないのに乗らざるを得ず、その症状を自覚する箇所だ。健常者も、これを観ると、同じ患者になってしまいそうだ。しかし、最後は、ヒロインがちゃんとエレベーターに乗り、恋人に「あたし、エレベーターに乗れたよ」と嬉しそうに告げる場面で終わる。ホラーなのに、「あまり恐がらなくて済んだ」という妙な満足感を覚える作品だ。ホラーが苦手な私は、ホッとした。主演女優も気に入った。
(韓国文学)







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