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評者◆小嵐九八郎
そもそも、イスラム教、ムスリムって何なのだ――田原牧著『中東民衆革命の真実――エジプト現地レポート』(集英社新書、本体七六〇円)
No.3029 ・ 2011年09月10日




 二〇一一年の今年上半期の世界史的大事件は、それぞれどこかで関連はあろうが、まずは昨年暮れにチュニジアから始まったアラブ諸国の叛乱が、アラブの盟主とも映ったけれどどうもアラブの大義を通さないとも映るムバラク政権のエジプトで爆発し、アルジェリア、イエメン、サウジアラビア、リビア、シリアなどへ波及したことだろう。それに、フクシマゲンパツが大事件として並び、ドルの格付けが下がり、アメリカの政治・軍事の力もこれからの予測がつくことが起きたことが次ぐのだろうか。
 その“アラブの叛乱”の波がここへきて、リビアでは人人の方が勝利へときたけれど、シリアではデモの弾圧というより銃撃で人人を鎮圧していて、うーむ。他のアラブ諸国の叛乱はどうなっていくのか。
 その上で、なんでアラブの盟主といわれるエジプトでは、前独裁者を檻に入れて裁判にかけるなんつうのが成立し得ているのか、その独裁の中身、経済、軍事、宗教、イスラエルとの関係、風俗はどうなのか、社会主義勢力や労働運動は、この叛乱ではどのような態度で噛み得たのか、以後、他のアラブ諸国はどうなっていくのか、うんと気になる。でも、解らない。そもそも、イスラム教、ムスリムって何なのだ。岩波文庫の『コーラン』は仕事上、義務的に読んだけれど、そして、二人称によるポエムとして感動的なのだけれど、やっぱり正直にいって解らない。解らないけど、ベルリンの壁の崩壊以後は湾岸戦争、9・11NYテロリズム、イラク侵犯と世界史はイスラム教がらみで推移してきた。
 解る本が出た。田原牧著『中東民衆革命の真実――エジプト現地レポート』(集英社新書、760円+税)である。田原牧さんは、二十五年間ほど、自らの足で中東、イスラム圏を見つめ、カイロの大学で学び、今は、あの東京新聞の熱い『コチトク』、つまり特報部のデスクである。エジプト叛乱の凄みばかりでなく曖昧さ、インターネットの力、かのアル・カーイダの趨勢まで解るだ。760円は安過ぎる。
(作家・歌人)







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