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評者◆阿部公彦
漱石はわかったふりをしなかった――いかに文学の語り方をめぐる問いが、漱石の中でなまなましく生き続けていたか
英文学者 夏目漱石
亀井俊介
No.3025 ・ 2011年08月06日




 ときに無性に評伝が読みたくなる。研究書ではなく、理論でもない、だけども小説でも、ルポルタージュでもない。良い評伝には、対象とする人物とすっかり馴染んでしまったところから出発するような、いい意味での〝訳知り顔〟の風情がある。「××氏について、いいことを教えて進ぜよう」という、まるで蔵から出してきた宝物を「むふふ」と含み笑いとともに示すような、くつろいだ語らいの姿勢が欠かせない。風呂敷をめくった下に、思いがけない発見もある。亀井俊介『英文学者 夏目漱石』はまさにそんな本だ。
 もちろん漱石で評伝をやるときは要注意である。もともとエピソードの人だ。「鏡子夫人悪妻伝説」にはじまって「砂糖がけ南京豆事件」「ロンドン発狂事件」その他ゴシップめいた噂には事欠かない。それだけに、どこかで聞いたような話になりがちなのだ。だが、本書はそのあたり、実に際どいところで〝評伝〟となっている。人物としての漱石への関心を保ちつつ、たいへん硬派な問題にも取り組んでいる。
 何しろ設定された目標は「英文学者としての漱石の再評価」。「漱石はほんとに英語が出来たのか?」といった話題についてはすでに川島幸希『英語教師 夏目漱石』(新潮社)などで綿密な検証が行なわれているが、亀井氏は「英文学」に焦点をあてることで、こ...







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