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評者◆鴻農映二
アトリエ訪問――申東浩(金浦市)
No.3024 ・ 2011年07月30日




 仁寺洞の貴婦人こと展示マネージャーの金随娟さんに連れられて、申東浩画伯のアトリエを訪ねた。
 ソウルに隣接する金浦市の人口は、約20万人。そこでは有名な画家だという。事前に見せられたカットは、雑誌の挿絵などで眼に馴染んだタッチだったので、もちろん、全国区レベルの画家だ。
 市庁近くのアトリエは、最初、小屋のように見えたが、ずーっと上がつながっている四階程度のビルだった。申画伯が一階の外壁を彩色し、そこで切れている印象を与えたのだ。二階に続く階段の周囲にも絵が描かれている。
「これ、自分の持ちビルなの?」
「いいえ、借りビル」と、金随娟さんの返事。
「こんなことして、値段が下がるんじゃないの?」
「上がるんじゃないですか?」
 ま、どっちでもいいけれど。
 一階のアトリエの天井は、白い紙でたくさんの筒をこしらえ、蜂の巣を模している。部屋は、三角で、窓が大きい。ソファー、作業机、壁には、カットを施した鏡。これはデザイン製品だという。
 これまで開いた山水画の個展のパンフレットを見せてもらう。誰が見ても欲しくなる見事な作品だ。
「芸術院の会員も形無しのレベルですね」
 いたずらっ子のような顔の五十歳の本人を前にそう感想を述べた。
 才能、才能、才能、才能の前には、頭を垂れるしかない。
「いつ頃から描き始めたんですか?」
「小学校に入る前から、気がついたら描いていました」
 話をする間も扇子に絵を描き、サインしてくれる。半紙にブドウの絵を描き、贈ってくれる。頭より先に手が動く。動く手が止められない。
 癌の手術を二回、受けた。週に一度忠北大学で水墨画を教えている。歩道橋の側面にクレーン車に乗って絵を描き、
「こうして肉体労働もしています」
と己を茶化すように微笑む。日本での個展も計画中だ。
(韓国文学)







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