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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3023 ・ 2011年07月23日




くまのぬいぐるみ
ほげちゃんとかぞく
▼ほげちゃん ▼やぎたみこ 作
 ある日のこと、まさるおじさんから、ゆうちゃんに、にもつがとどきました。あけてみると、なかからでてきたのは、クマのぬいぐるみです。おとうさんとおかあさんは「あれれ。へんなかおだなあ」「カバなんて、ゆうちゃん、きにいるかしら」といいつつ、ほげちゃん、というなまえをつけました。ゆうちゃんは、ほげちゃんをすっかりきにいって、だっこしたり、かじったり、ひきずったり。ごはんをたべるときもいっしょ。だから、オムライスのケチャップがほげちゃんにもついてしまいました。
 かぞくでおでかけするときも、ゆうちゃんはほげちゃんをつれていこうとします。「ほげちゃんは、おいていこうね」「あらってなくて、きたないんだもの」とおかあさんにいわれて、ゆうちゃんはなきそうなかおで、おいていきます。
 ねこのムウとおるすばんすることになった、ほげちゃん。「ゆるせない――!」。クマなのにカバといわれ、へんなかおといわれたり、きたないといわれたことに、ばくはつしたんです。さて、ほげちゃんは? かぞくがかえってくると、けちゃっぷまみれでたおれていた……。
 ほげちゃんとゆうちゃんたちの、くすっとわらえてこころあたたまるものがたり。
(6月刊、縦25cm×横19cm三二頁・本体一〇〇〇円・偕成社)
天使にみまもられる
ちいさな子どもたち
▼おやすみまえに ちいさな てんしたちへ ▼サラ・ドッド 文/ドゥヴラヴカ・コラノヴィッチ 絵/女子パウロ会 訳編
 とてもなかよしのリリとメイは、ようちえんでも、いつもいっしょ。ある日、シャンティというあたらしい女の子がやってきました。でも、あそびたいことがちがって、いっしょにあそべません。そこに次の日、ピエロがやってきます。でも、いすにすわると、たおれてしまいます。「そのいす、あしが二本しかないんだもの!」。リリがわらいながらいうと、ピエロはポケットから、ぼうを一本とりだして、いすのささえにしました。そして「あしは三本なくちゃあね」といいました。ちょっとだいじなことを、ピエロはこどもたちにおしえたのかもしれませんね。そのときシャンティは、「いいことがある!」と、三人でしかできないあそびをおもいつきました。三人で手をつないでバランスをとるあそびです。
 いつも、天使がとおくから、こどもたちをみまもっています。こどもはひとりぼっちじゃない。この世のだいじな天使ですもの。そんなおはなしが、ここにはつまっています。(7・15刊、縦24cm×横22cm四六頁・本体一三〇〇円・女子パウロ会)
沖縄戦を語りつぎ
戦争のない未来へ

▼あけもどろの空――ちびっこヨキの沖縄戦 ▼高柳杉子 作
 ヨキは六歳。沖縄の東風平の村にすむ七人家族の末っ子です。みんなハタラチャー(よくはたらく人)ぞろいで、自分たちで食べるものは、畑で育てる。みんな畑仕事に精を出す毎日でした。ところが、イクサが来て、畑仕事ができなくなった。バクダンが降り続けて、おばさんも、トミ姉ちゃんも死んでしまった。
 ヨキはバクダンをさけてにげまわった。うわーっ! きゃーっ! だれかが「バンザーイ」って叫んだ。死ぬときはそういうんだって、ヨキはきかされた。死んだ人がいっぱいたおれていて、つまずいたり、またいだりしながら、ヨキは生きのびた。「死んじぇならんだぅ(死んではいけない)」。母さんはそういってはげましてくれた。
 ヨキたちはアメリカ軍のホリョになり、生きのこって村にもどった。村人は、はんぶんぐらいにへって、もどってこないともだちもいた。ヨキたちは、また畑で野菜をそだてながら、「いったーる、たぬまりーる、たぬみんど(あんたたちが頼りだ。頼むよ)」と語りかけるのでした。
 タイトルの「あけもどろ」は、太陽が東の空を染め、夜が明けはじめる空をあらわす沖縄のことばです。著者は一九六五年に沖縄で生まれて、中学校の教員を務めたあと、沖縄戦を子どもたちに伝えようと、熱意を持ってこの本を書いたそうです。ヨキは著者のおかあさんです。二〇〇九年、著者は四四歳の若さで世を去りましたが、戦争のない未来の「あけもどろ」の願いを、この本にこめました。
(11・19刊、A5判一〇八頁・本体一五〇〇円・子どもの未来社)
子どもの成長のなかに個性がある


▼おつきたん見てる? ▼牧瀬かおる 文/はやしかよ イラスト
 六歳の男の子、耕太は、コーたんとよばれています。筋力がすこし弱くて、にぎったり、走ったりするのが苦手です。でも、あきらめずに、何度も何度も練習して、いろんなことができるようになりました。
 生まれたときは、とても小さくて、お母さんのおっぱいがじょうずに吸えず、泣いてばかりいました。でも、おかあさんの愛情で吸えるようになり、大きくなりました。でも、六歳になっても、「おかあさん」とはいえなくて、「おかあたん」です。たいそう甘えんぼうで、お母さんのすがたがみえないと、「おかあたん、おかあたん」とさがしまわります。
 ある日、お母さんにおんぶをしてもらって、お月さまを見ました。手をのばすと、いまにもお月さまに手がとどきそうなきがして、うんと両手をのばしました。「お月たん、ここまでおいで」と、耕太がはしると、お月さまはうしろからついてきます。月夜の晩には、耕太とお月さまの追いかけっこがはじまります。耕太は十五夜のお月さまを楽しみに待つようになりました。いつも、いつも、お月さまは耕太をみまもってくれています。
 耕太の成長に個性を見る。子どもの成長によりそうたいせつさをつたえてくれる絵本です。(7・7刊、A5判六四頁・本体八〇〇円・イーフェニックスBook‐mobile)
不思議でなつかしい
マザー・グースの世界


▼あたしのまざあ・ぐうす ▼ふくだじゅんこ 絵/北原白秋 訳
 はじめてマザー・グースに会ったとき、なんだか懐かしいような、こわいような、聞きたいような、触れてはいけないような、なんとも不思議な気持にさせられたと、この本で絵を描いたふくだじゅんこさんはいいます。そしてなぜだか、「いつか行かなくてはいけない場所」だという気がしたんだそうです。
 この本の訳者・北原白秋は、「不思議で美しくて、おかしくて、ばかばかしくて、おもしろくて、なさけなくて、おこりたくて、わらいたくて、うたいたくなる」と『まざあ・ぐうす』のはしがきにかいています。そんな不思議な、いつか行かなくてはいけない場所にたどりついて、この本がうまれました。
 「お月さまの中のおひとが、/お月さまの外をながめて、/そして、こうおっしゃるわ。/いま、いま、わたしはおきかかる。/赤子のみんなはいまお寝る」
 見開きでここに描かれているのは、真ん中に子ども、両がわにはイヌとネコ。なんとも不思議で、おもしろい絵ですね。次のページでは、月夜にネコが胡弓をひいている。なぜか、めうしがお月さまをとびこえます。子イヌがそれをみてわらいだし、お皿がおさじをおっかけます。「へっこら、ひょっこら、へっこらしょ」。ふくださんの絵に、白秋の訳が光ります。(5・22刊、A5判四八頁・本体一八〇〇円・冨山房インターナショナル)
パピーウォーカーと
盲導犬のドラマ



▼おかえり! 盲導犬ビーン ▼井上こみち 文/広野多珂子 絵
 リョウタは札幌に住む小学二年生。あるとき家に、盲導犬候補の子犬がきました。パピーウォーカーとして、一年たらずのあいだだけ、リョウタの家で育てるためです。やってきた子犬はビーンとなづけました。やんちゃでかわいい子犬です。リョウタはビーンと、とても楽しいときをすごしました。
 そしてビーンとのおわかれの日がやってきました。盲導犬協会にもどるのです。それから、月日がながれて、高校二年生になったリョウタは、八年ぶりにビーンに再会することになるのです。そしてビーンはふたたび家族の一員になりました。
 子犬のときにすごしていた部屋のことを、ビーンはおぼえていました。パピーウォーカーと盲導犬の忘れがたいドラマです。(6・30刊、A5判九六頁・本体一三〇〇円・佼成出版社)







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