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評者◆鴻農映二
仁寺洞の一週間――画家、朴性善の個展に付き合って
No.3023 ・ 2011年07月23日




 ソウルの観光スポット、仁寺洞には画廊が軽く百を超える。各階の小さなものも含めて、正確な数を割り出そうと思っても、次の瞬間、虚しさがつき上げる。毎日のように、この通りを往来するのに、自分が年に一、二度、間に合わせの時間つぶしにしか、中に入らないのを意識するからだ。
 慌しい日程の観光客も、通りを画廊が取り囲んでいるのに、一箇所も入らない。用があるのは、土産物屋と食堂、喫茶店だ。
 韓国民もあまり、入らない。
 「有料だと思っているんですよ。小学校でしっかり教えなきゃいけないのに……」
 画家、朴性善の言葉だ。
 「仁寺洞の画廊は、貸館料で維持されています。額縁屋や、紙・筆などの材料屋も商売が繁盛し、展示会を開きたい画家や書家だけが犠牲になっている」
 一週間の貸館料は、自費出版の本が一冊、出せる程度の額だ。そして、誰も見に入らない……。
 朴性善の個展に、一週間、付き合った。場所は、仁寺アートプラザ。一階は、土産物屋だが、画廊は四階だ。ほとんどの人間は、その存在すら気づかないだろう。
 オープニング・パーティーには、大勢、集まった。そして簡単なあいさつと顔ぶれの紹介が済むと、近くの宴会場に流れた。振る舞い酒と食事にありつくためだ。
 「きょうで死んでもいいと思って、がんがん、飲むんです」
 どうせタダ酒なので、私は友人を二人も連れていった。
 幸い、朴性善の絵は、初日に三点売れ、最終日までに更に二点売れ、制作依頼が一件あった。それなりのネットワークと戦略があるらしい。
 かれは、「展示マネージャー」という肩書きの、金随娟という美しい女性を雇い、接客にあたらせた。
 「きれいな女性が作品の説明をすると、作家のイメージアップになります」
 金随娟は、この道六年の専門家だ。しかし、パーティー翌日から、来場者は、さっぱりだった。
(韓国文学)







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