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評者◆古澤健
映画とは、驚きへの、世界への窓口――映画を見続け、その正体を知ろうとして評論や批評を読み、また映画に向き合い、その上で自分が向き合っているものが大いなる謎であることを理解しない者に、映画は語れないし、作れない。
伊藤計劃記録‥第弐位相
伊藤計劃
No.3019 ・ 2011年06月25日




 先頃、長編小説『ハーモニー』がアメリカでフィリップ・K・ディック賞のSPECIAL CITATION AWARDを受賞した伊藤計劃氏による短編小説・コミック・そして生前ブログに発表した膨大な文章を集めた「記録」である。僕自身、伊藤氏の存在を知ったのは『虐殺器官』以前のブログでのことであり、氏の映画に関する慧眼に、同世代についに信頼できる映画評論家が現れた、とワクワクしていた。伊藤氏が過去にどこでどんな映画を見ていたかを読むと、おそらく氏と僕とは中高生の頃に確実に映画館ですれ違っている。その後の黒沢清監督の映画や蓮實重彦の本との出会いも、似たような状況だったのではないか。まるで隣町の高校の映画研究部の冴えない部員同士、というような気分だ。上の世代を尊敬し、遺産を継承しつつも、自分が見てしまったあれやこれやを、自分の手元に残った感触を愛さざるを得ない。これはなんだろう。この感触を、誰も言葉にしてくれない。その不満が、僕らの世代をミニコミやブログ、自主映画へと向かわせたのだと思う。伊藤計劃という映画評論家の誕生をそんなふうに想像できてしまうからこそ、僕にとって氏は恐怖を感じざるを得ない評論家でもある。
 伊藤氏は映画に向き合いながら、絶えまない問いかけと発見とのあいだで不断に揺れ続けていた。映画に向き...







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