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評者◆秋竜山
わたしはオバサンになりたい、の巻
No.3016 ・ 2011年06月04日




 田中ひかる『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書、本体七〇〇円)で、〈「女性らしさを放棄した」と表現される「オバサン」である。〉と、ある。〈オンナであることを、忘れ去ってしまって久しい」とはつまり「女性らしさの放棄」である。〉と、いう。オンナであることを、忘れ去ってしまうと、オバサンとなり、女性らしさの放棄もオバサンとなる。私は、オバサン大好き派だ。男だから、オジサンになって当たり前となるだろうが、どっちかというと、オジサンよりオバサンになりたいくらいだ。なぜ、オバサンがいいかというと、私は大勢のオジサンの中にいるより、大勢のオバサンの中に身を置くほうが、気がやすらぐ。なんといっても、「お母さん」である。お母さんにつつまれているような気分になってくる。オジサンの場合は、「お父さん」ということになるだろうが、お父さんのなれのはては、ショボクレてしまっている。そういう、自分自身もショボクレ・オヤジではないか。ということになるが、ショボクレればショボクレるほど、お母さんのオバサンのあの生命力の中に身を置きやすらぎがほしくなるものである。その点、今、街へ出ると、オジサンの姿はまったくない。そして、オバサンの姿が特別に目立つ。当然、オバサンの中に居ることになる。自分がオバサンを独占しているかのようなサッカクさえしてくるのである。「このオバサンたちは私のものである」と、ね。
 〈生活場面の随所において、遭遇するオバサンの図々しさが行為として目立つからでしょうね。オバサンの出没エリアは無限、縦横無尽ですから。ただ、何もオバサンに限ったことではありません。図々しさにも色々有りますが、若い女の子であれオッサンであれ、図々しい輩はいくらでもいます。オバサンの図々しさがまだ可愛く思えるほど傍若無人の考え方の持ち主、悪質と言ってよいほどの図々しさに満ちたヤツは、今話題の公人などがまさに悪しき例ですが、大勢存在しています。そもそもなぜ図々しいのでしょうか。一番の理由は、自分がオンナであることを、忘れ去ってしまって久しいからだと思います。(略)世の中には素敵なオバサンもいらっしゃいますけどね……。(「Yahoo! 知恵袋」二〇〇七年一二月二日)〉(本書より)
 よく考えてみると、街へ出て、オバサンの中にまじらなければならない男たちをよくみると、みな満足感を持っているようだ。さらに、よくみると、それらのオジサンたちはオジサンを進化させ、オバサンに変身しているようにみえてくる。オバサンへの転身とでもいうべきか。「男性らしさを放棄した」オジサンたちのたのもしい姿である。生命力にあふれているようなオバサンたちに教育されたオジサンたちである。今の時代、「男らしく」生きるということは、ショボクレて生きるしかないのだ。あれも一生、これも一生の人生なら、男らしいショボクレより、女らしい馬鹿笑いをして生きるほうが、どれほど幸せか。どっちが得か。「ヨシ!! 俺は今日から、男らしさを捨てて、女らしく生きよう」と決意して街のオバサンたちの中へ入っていく。「ナニよ!! このオヤジは!!」と、白い眼でみられたとしても、ガマンガマン。その内になれてくるものだ。







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