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評者◆秋竜山
井上ひさし流の笑いとは何か、の巻
No.3013 ・ 2011年05月07日




 いい本みつけた!! なにが、いいかって。文章が短いってこと(サッと読めるから、ヒトコマ・マンガや、四コマ・マンガをみるような。パッと見て、パッとわかる)。内容がよすぎるくらい、いい。ホメたら切りがない。その分だけ、ちょっといいたいこともないことはないけど、ね。井上ひさし『ふかいことをおもしろく――創作の原点』(PHP研究所、本体一一〇〇円)。※本書は、NHK BSハイビジョンで二〇〇七年九月二十日に放送された番組「100年インタビュー/作家・劇作家 井上ひさし」をもとに原稿を作成し、単行本化したものです。と、いうわけだ。書店で立ち読みするにはちょーどよい。もしかすると、マンガの単行本のように、ビニール本にでもしなければ、サッと読まれてしまうキケン性がある。そういう客は、そーさせればよい。ところが、世の中すてたものではない。いくら立ち読みしてしまっても、買いたいという気を持たせてくれる。家に持ちかえって本箱に立てかけておきたい。家で何度となくジックリ読みたい。内容が内容だけに!! と、いう人間を相手にしている本であるだろう。と、私は思った。だから私は買った。そして、家に持ち帰った。私がこの本を何よりも気に入ったのは、本書の中に「笑い」という文字をみつけたからだ。漫画家という職業柄、笑いという文字にはビンカンというかシンケイシツであるようだ。で、本書では。〈13僕の創作術〉の中で。
 〈これが連載小説だと、「今回は、こう行っちゃえ」って書き始めて、続きは次の締切りまで一カ月考えて、ということもできますが、芝居はそうはいきません。結局、初日の幕が開いて、お客さんが拍手をして、「いい芝居でした」「感動しました」「笑いました」と言ってくれるのが何よりの報酬なのです。〉(本書より)
 井上さんにとっては、「笑いました」と、いわれるのが一番うれしいのかもしれません。井上流笑いのために〈遅れようが何しようが、とにかくいいものを書くしかないのです。〉と、いい、遅筆として有名だった。遅れればその分、面白い作品を仕上げるのだから、遅れても許すしかなかったのかもしれない。誰もマネのできるものでもない。井上ひさしのエライところはそこだ。私がもっともヨロコビのページは、〈15笑いとは何か〉であった。笑いとは何か!! とは、人間の永遠に考えるところである。みんな同じことをいっているけど、ね。サテ、井上流ではどうか。
 〈僕の芝居には必ずといっていいほどユーモアや笑いが入っています。それは、笑いは人間が作るしかないものだからです。〉(本書より)
 もし、人間が笑いとは無関係であったとして、猿が笑いを作るしかない動物であったら、いったいどのような笑いをつくりだすのだろうか、なんて、考えてみたりするが、くだらんだろう、ね。
 〈人間の存在自体の中に、悲しみや苦しみはもうすでに備わっているので、面白おかしく生きようがどういう生き方をしようが、恐ろしさや悲しさ、わびしさや寂しさというものは必らずやって来ます。でも、笑いは人の内側にないものなので、人が外と関わって作らないと生まれないものなのです。〉(本書より)
 笑うために生まれてきたんだ!! なんて、言いたいものだ。







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