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評者◆伊達政保
雨と余震の中での演奏に、熱狂する聴衆――仙台市で「渋さ知らズオーケストラ」のフリーコンサート
No.3013 ・ 2011年05月07日




東日本大震災から1ヵ月以上、地震と津波による死者、行方不明者は二万八千人近くに上り、震災に伴う福島第一原発の事故は放射線被害を拡大し続け、収束も定かでない。いまだ余震や新たな地震も発生し続けている。それらによる避難者は14万人以上とみられ、復旧、復興が語られ始めてはいるが、人々にとって現在も進行中の災害である事を忘れてはならない。
 その震災から1ヵ月目、4月11日の午後、宮城県仙台市の中心部、県庁の前にある勾当台公園野外音楽堂で、「渋さ知らズオーケストラ」のフリーコンサートが行われた。東京ですらライブやコンサートの自粛や中止が相次ぐ中、あえて被災地でのライブを急遽決行することになったのだ。
 事の起こりは「渋さ」のリーダー(ダンドリスト)不破大輔が友人との話で、今回の震災に際し何が出来るかいたたまれず、トラックに電源を積んで東北へ演奏に行こうと計画。何回もライブを行ってきた仙台の友人に相談。そして6日の午前、「渋さ」の関係者に一斉メールで協力を依頼。オイラも戦後の仙台の瓦礫野原を見、盛岡やいわき、気仙沼等東北を転々とし、中学後半から高校時代を仙台で過ごしたことから、今何が出来るかと悶々としていたところだったので、すぐさま協力と同行を申し出。6日の午後には「渋さ」の友人の手配で、勾当台公園でのフリーライブが決定。参加者も当初の予定を遥かに上回り20数名、マイクや音響機材も自前で調達。アングラの底力、炊出しによる自前の食当部隊も編制。参加メンバーのスケジュール調整と車の手配、分乗する車割り、設営と撤収の調整。その間にも、ジャズ・ヴォーカリストの酒井俊さん、詩人の三角みづ紀さんなど参加者が増え続ける。ついには、10日夜から11日朝にかけて、車10台に分乗した総勢37名が、仙台に向かうことになったのだ。
 東京よりかなりの冷え込み。昼ごろまでには続々とメンバー到着。3時の開演に向けて自ら会場機材の設営。月曜の午後、情宣期間も3日くらいという条件でも、続々と観客が集まってくる。東京でも余り見られない大編成、パフォーマンス、ダンス、舞踏ありの渋さ知らズオーケストラの演奏が始まった。雨が降り出す中、聴衆は熱狂、中盤からは総立ちだ。途中かなりの余震、観客は一瞬ざわついたが演奏は続行された。最後に不破大輔が「演奏したいから来ちゃった。ありがとう」と挨拶。聴衆も喚声でそれに応えた。緊張感と達成感が入り交じった素晴らしいライブだった。
 コンサート終了後、近くの若い男の子たちが「来てもらって良かったあ」「こんなの忘れてたっちゃ」とボソッと会話していた。
(評論家)







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