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評者◆秋竜山
サバサバした人、の巻
No.3012 ・ 2011年04月30日




 二〇一〇年の暮、女優高峰秀子さんが亡くなった。新聞の死亡記事で見て、映画ファンとして、なんとも淋しい思いがした。日本にはミリョクある女優がいっぱいいるが、高峰秀子さんがいなくなるということは、「日本の映画界も、また一つ淋しくなるなァ……」と、いう気持が強くした。かなり昔になるが、あるパーティで遠くから高峰秀子さんを拝ませていただいたことがあった。その時、私は、画面ではなく実際に動いている姿に、「本当に高峰秀子という女優が、この世にいたんだ!!」と、コーフンしたものであった。シャキッとした姿は映画で観るのと同じであった。なぜかしら、と思いつつ。この四月にたて続けに高峰秀子の映画ビデオを何作品か観ることになった。〈浮雲〉〈カルメン純情す〉〈カルメン故郷に帰る〉〈放浪記〉〈二十四の瞳〉など。以前、ビデオで観ている作品であるが、今回観て、ビックリした。高峰秀子という大女優の存在感であった。大人の女性を感じさせる数少ない女優の一人でもある。淋しいというのは、その大人の女性を感ずる女優が日本からいなくなってしまうということだ。今の女優は子供ぽくて、大人さを感じさせないなァ…!! と、いったら先輩が、それはお前が年をとったせいであって女優の年齢がみな年下である証拠だ!! と、いった。そういえば、大人の女性を感じさせてくれる女優は、たしかに自分より年上である。年下でも大人の女性を感じさせる女優もいなくはないけど、ね。劉文兵『証言 日中映画人交流』(集英社新書、本体七六〇円)を読んでいたら、高峰秀子さんの活字が出ていた。〈第一章 高倉健〉〈第二章 佐藤純彌〉〈第三章 栗原小巻〉〈第四章 山田洋次〉〈第五章 木下惠介〉による、邦画界トップクラスを中国人映画研究者がインタビューをするといった内容の本である。〈第五章 木下惠介〉の中で、高峰秀子の名前が出てくる。〈カルメン故郷に帰る〉〈二十四の瞳〉など、木下惠介監督の作品である。本書、〈晩年の木下惠介――最後の助監督・本木克英〉の中で、
 〈――心に残る木下さんのお言葉とかはありますか?
本木(略)また「映画は女優で決まります」ともおっしゃっていました。木下さんは、湿っぽく男に媚びたり、しなを作るような女性がそもそも嫌いなんです。「化粧するんじゃないの、女は。着飾って、よく見せようという魂胆が透けて見える。だいたい素直にいきていないんだよ」って、斬り捨てていました(笑)。一方で、好きな女優さんとしてよく名前が出ていたのが、高峰秀子さんや、太地喜和子さんでした。美貌を備えながら、性格は男っぽく、サバサバした人です。内面をさっぱりと表に出せる女優さんが、大好きだったんですね。〉
 と述べられている。これを読んで、「ウン、その通り、そーいう表現がピッタリだ。うまいことを言う」と、思った。大女優高峰秀子を〈サバサバした人〉と言いあらわしている。サバサバした人、なんて忘れていた。そーいえば、昔、よく聞いた言葉である。今はあまり聞かれなくなった表現でもある。辞書には、さばさば〈気持ちがさっぱりするようす。〉とある。







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