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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3011 ・ 2011年04月23日




新たに出会った
黒い鳥と白い鳥
▼みんな かわいい ▼内田麟太郎・文/梅田俊作・絵
 鳥の巣に、たまごがたくさんありました。あるとき、たまごからいっせいにひながかえりました。白い鳥が次々とうまれてきます。そのなかに一羽、黒い鳥が生まれました。
 群れをなす白い鳥たちは、たった一羽の黒い鳥をいじめます。黒い鳥はいつもかなしかった。だってつつかれるんだもの。それに、だれもあそんでくれなくて、かなしかった。
 そんなあるとき、黒い鳥はうわさをききました。山のむこうには、黒い鳥ばかりいるって。白い鳥もうわさをききました。山のむこうには、白い鳥ばかりいるって。それぞれ、ちがううわさをたよりに、山のむこうをめざします。
 暗くてさむい夜がやってきます。疲れた二羽の鳥たちが、山のなかでであいました。どんどん雪がはげしくなって、二羽はよりそい、おたがいをあたため合って、寒さをしのぎました。白い鳥は、黒い鳥から温かさをもらい、黒い鳥は白い鳥から温かさをもらって生きのびたのです。もう白黒なんて、関係ありません。いちばん大切なものを、お互い見つけだしたのです。
 二羽はこうして一緒になりました。そして、いっせいにひながかえりました。とてもかわいい鳥たちの世界が広がります。(4・25刊、25×25cm三二頁・本体一四〇〇円・女子パウロ会)

ももさんとすごした
なつかしい場所
▼南の島で ▼石津ちひろ・文/原マスミ・絵
 ぼくのなまえはワタル。こどものころ、とうさんの妹のももさんをたずねて南の島にいきました。ももさんは、まいにち海につれていってくれた。ぼくは泳げないけど、ももさんはずっと海に浮いているのにおどろきました。じつは、ぽこぽこという海の音をきいていたのです。
 ももさんは、浜辺にながれついたガラスでアクセサリーをつくっています。浜辺に行くと、ずっと下をみて、ガラスをさがしています。とつぜん雨がふりだしたとき、ももさんは空をあおいで、両手をひろげてくるくる回りだし、「ワタルくんも、ほら!」とおどりはじめた。ぼくもおなじようにやってみたら、体の奥から、しぜんに笑いがこみあげてきました。ももさんといると、しぜんな感覚がわいてくるからふしぎ。
 雨の日にはギターをひいて、じぶんのつくった歌をうたってました。「とおい とおい どこか/ここではない どこかへ いきたい」「花のかおりに さそわれて/たどりつくのは なつかしい場所」。ももさんとすごした夏のきおく。いつまでもなつかしい場所をえがいた絵本です。(4・11刊、A4変型判三二頁・本体一二〇〇円・偕成社)

ロシアで大人気の作家
オステルの物語世界
▼細菌ペーチカ 上・下 ▼グリゴリー・オステル・作/ワレーリー・ドミトリューク・絵/毛利公美訳
 いまロシアの子どもたちに大人気の作家といえば、グリゴリー・オステルです。オステルは1947年にオデッサで生まれた作家で、最初は大人のための詩を書いていたのですが、子ども向けの作品を書くようになりました。
 この本の主人公は小さな細菌の男の子ペーチカで、しずくのなかに住んでいるので、体はいつもびしょ濡れです。家族もみんな細菌なんです。いちばん上のお兄さんは、乳製品工場ではたらいていて、ヨーグルトを作っています。そして働いたぶんだけ、つまり「悪いことをしたお礼」に、牛乳をもらってきます。悪いことって? 牛乳の中でじっとしてるのが体に悪いから。ある日、お兄さんがもらってきた牛乳でペーチカはヨーグルトをつくろうとしたら、なんとケフィアができあがったのです。あのピチピチした、生きてるような飲み物ですね。牛乳のはずが、おいしいケフィアをペーチカがつくってしまったんだけれども、これが大当たり。ペーチカのケフィアを飲んだ乳製品工場の工場長は大喜びでした。
 ペーチカの誕生日がやってきました。この日はペーチカの一家がただの水しずくから、シロップのしずくに引っ越しをする日でもあったんです。たくさんのお客さんがきて、ペーチカにプレゼントをくれました。そして全員がお祝いの席についたとき、工場長が来て、贈り物に「細菌ペーチカをケフィア班の班長に採用する」と辞令をくれました。でもまだぼくは小さいんじゃないの、いつになったら大きくなるの? ペーチカはお父さんに聞きました。大きくなっても、ずっと小さいんだ、でも、小さいことはちっとも悪いことじゃないんだよって、お父さんは言いました。
 ちいさな細菌だけど、研究所へ行ったり、粒子を探したり、理論をまなんだり、ペーチカはいろんな体験をしていきます。上下で10のお話がつまった絵本です。細菌の世界がこんなに広がっているなんて。ドミトリュークの絵が読者をいざないます。(2・15刊、B5変型判各三六頁・本体各一六〇〇円・東宣出版)

車掌に化けたやまねこ
が「おにもつはいけん」
▼おにもつはいけん ▼吉田道子・文/梶山俊夫・絵
 こむぎは電車にのるのがだいすき。ある日、金魚の赤ちゃんがいっぱい入った瓶を袋に入れ、にいちゃんと電車にのりました。いとこのあゆみにあげるためです。すると、「ほんじつはご乗車、どーも、ありがと、ございます」と言って、紺いろの制服を着た車掌が入ってきて、「これから、おにもつはいけんにうかがいますので、どーか、ご協力をおねがいいたします」と言いました。
 え? おにもつじゃなくて、きっぷじゃないの? のっていたお客さんがいぶかしげにしていると、一人ひとりに「おにもつはいけん」とやってくるではありませんか。
 そしてついに、車掌はこむぎのまえに、ぴたっと止まりました。そしていきなり「おいのち一つに、きっぷが一枚。おにもつはいけん!」と、きんきん声でさけびながら、さっとこむぎの瓶に手をのばしました。するとそのとき……。車掌があっというまに、まどのそとへと飛びだした。「あっ、やまねこだ!」
 なんと、やまねこが車掌にばけて、だいすきな金魚をねらっていたのです。ほんとうの車掌の山田さんは、つきとばされて山のえきのベンチでねむっていたのでした。
 思いがけない体験をしたこむぎは、いっそう電車が好きになったとさ。(3・10刊、24×20cm四〇頁・本体一二〇〇円・福音館書店)

やきにく絵本の
おいしい食べかた
▼はしれ! やきにくん ▼塚本やすし
 お肉屋さんのお話です。今日入荷してきたお肉は、なんだか元気がありません。お肉屋さんは、お肉のちょうしがわかるんですよ。さあ、どうしよう。店長のうしやまさんは、「さあ、うんどうだ」と、お肉をうんどうさせました。やさいたちも見守るなか、なかよしキムチのグループとつなひきしたり、ひでんのたれで、もみもみマッサージをしたり。こうしてげんきなお肉がそろいました。
 そこに、やさいぎらい、肉ずきのたろうくんがやってきて「お肉がおいしい! お肉がおいしい!」とお肉ばっかりパクパク食べます。やさいは気が気でありません。「お肉ばっかり食べないで、わたしも食べてー!」
 「よし、じゃあぼくたちといっしょに行こう!」と、お肉がやさいたちにいいました。そして、いっしょに、たろうくんの口のなかに飛びこんでいきます。
 すると、たろうくん。お肉といっしょに、やさいを食べるとおいしいことに気がついたんです。えいようたっぷり、スタミナもたっぷり。おいしい絵本ができました。(1月刊、26×22cm三二頁・本体一三〇〇円・ポプラ社)







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