書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆鴻農映二
少女の日記を覗くと……――キム・ヒョンジン『心一つ、幸せ一つ』の暖かさ
No.3010 ・ 2011年04月16日




 少女の日記というと、すぐ思い浮かぶのはアンネ・フランクの『アンネの日記』だろう。その価値は、他に比べるものが思いつかないほど、尊く重いが、平和な日常にあっての日記と比較すると、より光を鮮明にするのではないだろうか?
 という前提で、紹介するのもなんだが、隣国の少女の日記を一つ御披露したい。現在、仁川市の富平西女子中学に通う1年生、キム・ヒョンジン嬢の日記である。2006年3月2日から、2007年2月20日まで綴られた日記が360頁の厚さで『心一つ、幸せ一つ』という本になっている。本人は1996年7月2日生まれだから、10歳から11歳までの記録である。
 本になったのは、少年韓国日報の日記公募に応募し、入選したからだが、「自分」を素材にし、これほど汲み出す内容があるのかその実験を見るようだ。
 たとえば、
(1)自分の名前を冠した新聞「ヒョンジン日報」を第34号まで編集している。その一部、「経済フォーカス」を紹介すると、
「きょうヒョンジン嬢と兄がワイロをもらった容疑で警察(ママ)につかまった。パパ、もうママに内緒でワイロ、渡さないで」
という具合。「気候」欄は、
「冷たい風が私たちに向かって、ひそかに近づいている。わたしとぶつかった冷たい風は、わたしの頬をぶって、逃げてゆく」
だ。
(2)読んだ本の感想と観た映画の内容紹介をし、コメントを加えている。
(3)ユニークな気配り。誕生パーティーにクラス全員を招待した。自分の気に入った者だけ招待すると、それ以外の者が差別されたと悲しむだろうからだ。その結果、パーティー終了後、家の中は、ムチャクチャな散らかりよう。しかし、本人は、自分の誕生を祝ってくれたことを感謝する。
 ジャーナリズムにとって、「平凡」は悪だが、この本は、平凡の楽しみ方を教えてくれる。自分の娘の日記を読んでいる気分にさせる。淋しさを忘れさせる本だ。
(韓国文学)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約