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評者◆井上章一
ワン・アンド・オンリーの仕事――ネットのない時代の力技に感銘を受けてもらいたい 特集:辞書・事典 『こと典百科叢書』(大空社)をめぐって
こと典百科叢書
No.3010 ・ 2011年04月16日




 私の書庫には、風がわりな本がいくつもある。来客が見て不思議がる本を、けっこうならべている。
 たとえば、松川二郎の『全国花街めぐり』(一九二九年)。昭和初期の日本列島各地にあった芸妓街を紹介するガイドブックである。類書もほかに、ないではない。しかし、往時の花流文化を、とくにその裏面まで知りたいむきには、これがおすすめ。
 そこには、芸者買いの交渉作法が、こまかくしるされている。どこの花街では、芸妓と寝たい時、どうきりだせばよいか。どのタイミングで、いくらつつめばいいか。その内情が、くわしく書きとめられている。
 いわゆる売買春史の研究者たちは、公娼の歴史をおいかける。遊郭制度のなりたちと、その展開に興味をよせやすい。私娼たちのそれは、おざなりにあつかわれる傾向がある。
 芸妓らが体を売ることは、おおむね黙認されていた。しかし、彼女らの売春は非合法である。とうぜん、公娼の場合とちがって、売買春の実態をしるした公式記録はない。その内実は、藪のなかにかくされている。
 松川は、その秘められた部分に、光をあてた。世間のうしろ指もかえりみず、また身銭もきって、全国の花街をあるきまわる。各花街で芸者買いをこころみ、値段もふくめた裏面を書きとめた。後世の風俗史家に役立つことがあろうという...







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