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評者◆秋竜山
ナゾだらけのおとぎ話、の巻
No.3009 ・ 2011年04月09日




 関裕二『おとぎ話に隠された古代史の謎』(PHP文庫、本体四七六円)を読む。この文庫本を読む。と、いうのも〈本書は、二〇〇五年一月PHP研究所より刊行された「おとぎ話に隠された日本のはじまり」を加筆・修正し、改題したものです。〉であるからだ。2008年9月に本書の文庫本化がされた。それが今だに書店に並べられているということは、やっぱり文庫は「残された本」ということになるからだろう。文庫化されると「よかった」ということになる。まず、いつまでも書店に並べられるからだ。書店に並べられてあるということは、いつかは売れるだろうという希望があるからだ(と、思うのだが違うかしら)。文庫の命は長い。それにくらべると、単行本の命は、はかなく、短い。そう考えると雑誌こそゴラク本の第一位であると思っている私には、すぐ消えていく雑誌を、どんどん文庫化して、いつまでも書店に飾ってほしいものだ。
 〈じっさい、われわれはおとぎ話について、いくつかの誤解をしていたようである。たとえばおとぎ話や昔話といえば、牧歌的な「童話」と思われがちだ。しかしここからして、すでに大きな間違いなのだ。絵本の中の昔話は、子ども向けにアレンジした代物にすぎないのであって、本当のストーリーの中には、目を疑うようなあらすじが隠されているからである。すなわち、われわれは子どものころ、大人たちの「教育的配慮」によって、本当のおとぎ話を聴かされていないのである。〉(本書より)
 これは、もう有名なことであるから、驚きはしない。でも最初、これを知った時、椅子から転がりおちたものだった。浦島太郎も竹取物語も金太郎伝説や酒呑童子説話も一寸法師も、因幡の白兎も、桃太郎も鶴の恩返しも、天の羽衣伝承も、そしてカゴメ歌の謎も、本書では本当のおとぎ話が語られてある。絵本の中の昔話は嘘話であったのか!! と、いうことになる。子供も大人も、だまされたことになるのか。「お爺さんが山へ、お婆さんが川へせんたくに、おばあさんが大きな屁へひった。お爺さんが山でくさかった」と、いうのも、桃太郎の笑い話である。テレビの時代劇で、「桃から生まれた桃太郎」なんてミエを切る場面などがあったりした。そして、今、子供が、「桃から生まれたキビ団子」とか「お腰に着けた桃太郎」なんて、いっている。それにしても、〈大人たちの「教育的配慮」によって、本当のおとぎ話を聴かされていない〉とはいえ、とにかく、発想にナンセンスの驚きと恐しさがある。大きな桃から子供が生まれる、ということだ。助けた亀につれられて竜宮城へ行くということだ。そこには乙姫さまがいるということも驚きである。そして、かぐや姫が、竹から生まれたということ。絵本には、太い竹をななめに切った切り口の中に赤ん坊のかぐや姫が入っている。それにしても、うまく竹を切ったものであり、間違えば、竹の中の赤ン坊を半分に切ってしまうではないか、と子供の頃本当に思ったものであった。本書では、〈多くの昔話は、「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました…」とはじまる。〉なぜ若者や中年の夫婦ではなく老人であるのか。など、謎だらけだ。







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