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評者◆秋竜山
どーぞ、横になって下さい、の巻
No.3004 ・ 2011年03月05日




 テレビの正しい観かたは、寝っ転がって観るのだと思っているのも、私はいつも、そーいう姿勢だからである。誰におそわったわけでもなく、いつの間にか、そーなってしまったからだ。ゴロ寝である。考えてみると、テレビを観ている時だけではなく、一日中ゴロゴロしている。自分にとって一番ラクだからだ。そーいう生活をしていると、他人の家へは行けない。子供の頃からだ。矢田部英正『日本人の坐り方』(集英社新書、本体七二〇円)では、腰を下ろして「坐る」、その「坐り方」について。日本人の身体技法の変遷。……を、寝っ転がって読む。
 〈「坐」と「座」とは、坐る「姿勢」と「場所」とを意味していることを、序章で説明した。「座」には「クラ」という読みもあって、「安座」と書いて「アグラ」と読ませることもできる。しかし、現代では「安坐(アンザ)」と「胡坐(アグラ)」とは別々のものと考えられる場合もあるので、この点、あらためて整理しておこう。もともと「アグラ」とは貴族が坐る「台座」や「腰掛け」などの「座具」の総称であった。「胡坐」と書いて「アグラ」と読ませるのはあくまで当て字だ。「胡」とは、中国の北方や西域の騎馬民族のことで、彼らは日頃馬に跨って生活していたので、腰掛けを携えて移動し、坐るときにはそれを利用していた。このような腰掛けが日本にも伝わり、「胡床」と呼ばれるようになる。これに腰掛けると足は安楽なので、やがて「台座」や「腰掛け」を使って安楽に坐ることも「アグラ」と呼ばれるようになり、「胡坐」という漢字が当てられたようである。〉(本書より)
 アグラをかくと、後ろへひっくりかえってしまうという人がいたりする。だから正坐しているのだという。その人がアグラをして後ろへひっくりかえったのを見たことがなかったが、まんざら嘘でもなかろう。面白いから一度見たいものだと、「ゼヒ、見せて下さい」と、お願いするわけにもいかないだろう。
 〈日本人の坐り方を考えるとき、江戸時代という時期は大きな分岐点であったようだ。この時代に「正坐」が徳川幕府の武家儀礼から庶民一般へと広まっていったことはまちがいないが、それ以前、中世の武士たちが好んでこの坐り方をすることはなかったことは、これまでくり返しみてきた。中世の絵巻で確認できる「正坐」の事例は、僧侶と女性の数例に限られていて、武士はだいたい安楽胡坐で坐っている。〉(本書より)
 坐り方として膝をどーするかだ。面白いのは、この頃は、身分の高い男性はみな膝をおっぴろげてどっかりと坐り、僧侶のほんの数例の他には、膝を閉じて坐っている男性であった、という。客の席で、正坐していると、「どーぞ、くずして下さい」と、いわれる。では……とばかりにホッとして、「アグラ」を組む。大体これで終わりとなる。だから、その次の段階の横になるということはありえない。私の場合は、ゴロ寝が一番ラクであることがわかっているから、「どーぞ、横になって下さい」と、いうことにしている。それでゴロリと横になっていただければ「しめた!!」ものである。今度はこっちがゴロリとできるからだ。畳の上でお互いに横になって語りあうのもたのしいものである。







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