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評者◆伊達政保
渋さ知らズ、アングラ機関説――東池袋の劇場あうるすぽっとで公演「渋さ知らズde怖いもの知らズ」
No.3004 ・ 2011年03月05日




 故平岡正明氏の言葉を借りるなら、「渋さ知らズ」はアングラの機関である。それはこの一月末、東池袋の劇場あうるすぽっとでの「渋さ知らズde怖いもの知らズ」と題された二日間の公演によって証明された。
 フリージャズ・パフォーマンス集団「渋さ知らズ」は、アングラ演劇の元祖とも言うべき「発見の会」の劇伴からスタートした。その後、ダンドリスト(リーダー)の不破大輔は「発見の会」をはじめ「風煉ダンス」「ルナパーク・ミラージュ」等多くの芝居の音楽を担当。現在「渋さ」で演奏される「本多工務店のテーマ」「犬姫」「飛行機」「火男」など多くの名曲がそうした芝居から生み出されていったのだ。
 また不破大輔はアングラ演劇の持つハチャメチャとも思えるドラマツルギーを自らの表現の中に吸収し、音楽の持つドラマツルギーと演劇のドラマツルギーを同一のものとして「渋さ知らズ」によって展開しようとしていったのである。その一つの方法がテント渋さ「天渋」と言われるものであり、自前で劇的空間を作り上げ、そこでの音楽による祝祭空間を創出しようという試みであった。それこそアングラ演劇が目指した空間そのものでもあった。
 08年、このあうるすぽっとでそうしたアングラの劇的祝祭空間を作り出そうという試みがスタートした。舞台美術、白塗り舞踏、ゴージャス・ダンス、パフォーマンス、楽器演奏、の多角的ワークショップとライブという企画構成で、劇的ドラマツルギーによって展開される劇伴をともなう舞踏と、多くの表現参加者を巻き込んだ渋さ知らズ大オーケストラのステージが行われたのである。
 そして今年、ワークショップとライブという企画構成は同じだが、劇的舞踏は「渋さ知らズ大衆オペラ宣言」という名の下に進化をとげた。「発見の会」の上杉清文、「曲馬館」「夢一族」「ルナパーク・ミラージュ」の翠羅臼、「風煉ダンス」の林周一、「鉄割アルバトロスケット」の戌井昭人など錚錚たるアングラ演劇の脚本家や詩人三角みづ紀がテキストに加わり、松橋道子、南波トモコ、ペロ、今や伝説の(と言ったら彼女らに殴られる)アングラ女優たちが参加した。「幕乃宇宙華五目星雲の海月」という演目の舞台は、冗談、シリアス、象徴的な台詞がちりばめられ、ハチャメチャ、ダイナミックな演技と舞踏と劇伴が融合した、かつての「発見の会」の芝居を彷彿させるものだった。これが、不破大輔が表現しようとするアングラのドラマツルギーなのだ。
 またそれらの全てが注ぎ込まれた大オーケストラの演奏は、劇場全体が祝祭空間となるアングラのカタルシスそのものでもあった。
(評論家)







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