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評者◆ベイベー関根
映画になったマンガとか、あんまり関係ないのとか――アレハンドロ・ホドロフスキー/メビウス『アンカル』(原正人訳、本体三八〇〇円)、マーク・ミラー/ ジョン・ロミータJr.『キック・アス』(光岡三ツ子訳、本体二二〇〇円・小学館集英社プロダクション)ほか
No.3003 ・ 2011年02月26日




 いやー、江口寿史と上條淳士の新刊が出たんで、「昔の名前で出ています」っていうタイトルで取り上げようかと思って買いはしたんだけど、やっぱヤメた、理由はあまりにも明白なので省略。
 ま、前回、「メビウスは『アンカル』が出たら取り上げてやらんでもない!」って書いちゃったから、こんなチャンスがまた来るとも限らんし、やっとくか。そう書くと、後ろ向きな発言と勘ぐられそうだが、いや、これは超快挙でしょ! 原書6巻分の合本336ページ、フルカラーで4000円しないんだぜ! 世界一安い『アンカル』だよ!? これを買わないなんて、ちょっとありえんだろ!
 物語の担当は、『エル・トポ』再上映とかで、日本でも一部で人気復活のアレハンドロ・ホドロフスキー。原書で読んだときもあんまり意味がわからなかったが、翻訳で読むと流れはわかるものの、やっぱりあっち行ったりこっち行ったりの連続で……エヘンエヘン、いや、しかしまあ巻措く能わざるという感じではあったかな。
 チンケな探偵ジョン・ディフールがひょんなことから知性をもった超高エネルギー体とでもいうべきアンカルを手にし、果てしない冒険へと旅だってゆく。途上でさまざまな敵、味方、女とめぐりあうが、いつしか宇宙の秩序をめぐる闘いに巻き込まれ……。
 読んでて感心したのは翻訳の巧みさで、25年前に出た版の訳文の硬さをふっきって、ホントにマンガやアニメのことば遣いになってるところだなあ。絵の素晴らしさはいうに及ばずで、これが売れなかったら、本当に日本のマンガ文化は終わりだ、ぜひ買ってくれ!
 次に、映画になったアメコミ2冊をまとめていこう。1冊目は、映画が日本でも大ヒットを記録した『キック・アス』、原作は『ウォンテッド』も手がけたマーク・ミラーに、作画はジョン・ロミータ・Jr.だ。お話はスーパーヒーロー・ウォナビーのヨワヨワくんが、引き返せない一線を超えてしまい……というもんで、しかも映画版とは話の展開も違う。大方は映画版の方に軍配を上げるみたいだが、気持ちの整理をつけやすい映画版と、現実のイヤ~な部分を見せつけられてどんよりできるマンガ版、どちらも捨て難い、といっとこう。アメリカじゃ現実にこういう勘違い野郎も出てきてるみたいなんで、その意味でも必読だなあ。
 2冊目は、カナダのオタク青年、ブライアン・リー・オマリーくんの『スコット・ピルグリム VS ザ・ワールド』(この前の童貞作『Lost at Sea』もかなりいい味だ)。お話は、バンドやったり高校生の女の子をひっかけたりしながらブラブラしてるスコットくんが、ある女の子にひと目惚れ(実は、その前から。詳しくは本書参照)、彼女と正式につきあうために、彼女の邪悪な元カレ7人を倒さなければならないことに……というゲーム感覚溢れたバカラブコメ。残念ながら全体の3分の1までしか訳出されてないが、続きを読むには、これが売れてくれないとどうしようもない。よろしく頼むぜ、みんな!
(セックスシンボル)







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