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評者◆ベイベー関根
遂にやってきたBD[バンド・デシネ]祭り――ニコラ・ド・クレシー『天空のビバンドム』(原正人訳、本体二七〇〇円、飛鳥新社)、パスカル・ラバテ『イビクス』(古永真一訳、本体二五〇〇円、国書刊行会)、クリストフ・シャブテ『ひとりぼっち』(中里修作訳、本体二五〇〇円、国書刊行会)
No.2998 ・ 2011年01月22日




 いやー、地獄のミサワ『カッコカワイイ宣言』読んだけど、面白いね! だけど、担当編集者が妙にイケメンで気にくわないから今回はパス!
 というわけで、前にこの欄で紹介した『ユーロマンガ』からいよいよ単行本がまとまり始めたァァァーッ!(この使い方でいい?)
 まずは、大御所ニコラ・ド・クレシーの『天空のビバンドム』だ! メビウスの『B砂漠の40日間』が高くて買えなかったという人も(至極ごもっとも! メビウスは『アンカル』が出たら取り上げてやらんでもない! ……と書いたら、原稿が載る前に発売されてしまった!)、こいつは買うしかないでしょう! なんといってもフルカラー、しかして作画技法はページ単位でめまぐるしく移り変わり(最近出たダニエル・クロウズの『ウィルソン』も、ページ単位で作画スタイルが変わってたなあ)、話もべらぼうに面白い。アザラシのディエゴが「愛のノーベル賞」をめぐる複雑怪奇な権力闘争に巻き込まれる(ナレーションさえが奪われそうになる!)一方、ここにはどう考えてもアダムと知恵の関係も重ねられてて、読み応えずっしり。充分モトがとれまっせ!
 さて、ニコラ・ド・クレシーがフルカラーなのに対して、国書刊行会からはモノクロBD(バンド・デシネのことね、念のため。あ、フランス語でマンガのことね、念のため)のシリーズが出始めたァァァーッ!(しつこい)
 1発目は、パスカル・ラバテ『イビクス』。アレクセイ・トルストイの『イビクス』(昔は『苦悩の中を行く』とかのタイトルで翻訳が出てたらしい。もちろん『戦争の平和』の人とは別人なんだが、なに、この人『おおきなかぶ』の人なの!?)を脚色した、ロシア革命の争乱から辛くも逃げ延びるゴキブリのごとき生命力をもつ男、シメオン・ネヴゾーロフのペトログラードからイスタンブールに至る道行きを描いた作品。全編筆で塗り込めたような特異なタッチで沼のような悪夢の世界を突き進むぜ!ウォーレン・ベイティ『レッズ』とか観とくとさらに面白いかも、なんつって、ははは。
 2発目は、クリストフ・シャブテ『ひとりぼっち』。こちらはうってかわって、生まれてこのかた孤島にある灯台から離れたことがないという男の物語。両親が男の醜さを恥じて灯台の中で暮らすうちにどちらも亡くなってしまい、男はたったひとりのまま50を迎える。彼の遊びといえばたったふたつ、釣りと辞書遊びだ。辞書遊び? それは、目をつぶって辞書に指を下ろし、当たったことばの意味を想像するゲームのこと。だが、なにせ男は灯台以外のところに行ったことがないから、ことばの意味は横滑りして奇妙なところに着地するのが常。そんなとき、食料とともにある手紙が届く……。
 というわけで、どちらも必読といわざるをえまい。3発目には、エマニュエル・ギベール『アランの戦争』が予定されているので、こちらもよろしく! というか、掲載されてるころにはもう発売されていることだろう!
(セックスシンボル)







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