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評者◆ベイベー関根
かなり遅れた青林工藝舎祭り――比嘉慂『砂の剣』『マブイ』(本体各一二〇〇円、青林工藝舎)、あらいあき『チュウチュウカナッコ』(本体一〇〇〇円、青林工藝舎)
No.2997 ・ 2011年01月15日




 えーと、この原稿が載ってるころにはもう年も明けてるかな? まだ明けてなかったら、本欄を読んでる読者の方の来年は明るい!ということにしておこう!
 さて、ずいぶん遅れちゃったけど、今回は比嘉慂(ひが・すすむ、と読む)の『砂の剣』と『マブイ』を取り上げとこう。『美童物語』が出たときにスルーしちゃったんで、この機会を逃したらもう取り上げることなくなっちゃいそうなんでねえ。
 比嘉慂は、アメリカと日本の関係の中で軋み続ける沖縄を描き続けているマンガ家で、作品の発表もマイペースなら、絵もいわゆるウマい絵じゃない。けど、大事なものを抱えている人にしか描けないリアリティに溢れているっちゅうかな。『砂の剣』は、『ビッグコミック』で作品を発表し始めてから5年間ほどの作品を集めた初期作品集。一部は小学館から出てたらしいんだけど、いや、お恥ずかしいことに知らなんだ。
 まあしかし、地味といえばこんな地味なマンガもないからね、その後は本がなかなか出せなかったということなのか、『マブイ』に収められたのは、1995年から2000年執筆のものまで、全部未発表作品ばかり。
 題材も、戦争の話が出て来るのは当然として、それが今の沖縄に残した爪痕を、さまざまな立場にある人たちの心の機微を踏まえた上で、ひとつひとつ丁寧に拾っていってるのはさすが。
 しかも、声高にいわゆる政治的な主張を訴えるわけじゃなくて、例えばここしばらくの基地移転問題とかにはいいたいことが山ほどあるはずなんだけど、それは表に出さずに、あくまでも「戦争反対」という基本線に止まってるところも何か不気味というか、底知れないものを感じるなあ。
 それでも、手塚賞やビッグコミック賞をもらってるんだからたいしたもんだ。そうだよ、『ジャンプ』といえば、昔は『はだしのゲン』を連載してたじゃないか!たとえバカ売れしないとしても、単行本くらい出してやれよ! というか、今からでも『ジャンプ』で連載枠もたせてやったっていいじゃないの! それが儲かってる人の役目だよ!! さて、もう一冊、時間的にはさらにさかのぼって、これまた青林工藝舎のあらいあきの『チュウチュウカナッコ』を。
 大人計画所属の女優にして(そちらは最近あんまり出演してないらしいですが)、井口昇監督初期の傑作『クルシメさん』『恋する幼虫』のヒロイン、あらいあきは、実はマンガ家でもあった!
 というわけで、コミュニケーションスキル(っていうの?)にやや問題アリのカナコちゃんが、ラーメン屋のあんちゃんや謎の女性陣(ハマトラのA子ちゃんに、ガレージバンドをやってるアザミ)に囲まれつつ流されてゆくフシギな日常? といった感じかな。読んでる方が「この人大丈夫か?」と心配になってくる前半から、ちょっと安心して楽しめる後半への移り変わりもいい感じ。いや、それはいいけど、個人的には『ゼンマイアタマ』の2号も早く出してほしいんだよ!
(セックスシンボル)







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