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評者◆秋竜山
少年漫画之黄金時代、の巻
No.2996 ・ 2011年01月01日




 「新年号」という文字が、まぶしくかがやき、生き生きしていた時代があった。嘘のようだ。ホントにそんな時代があったなんて。特に少年雑誌だった。昭和二十年代後半から三十年代にかけて、私は学校の勉強なんてどーでもよく、この時代の少年雑誌こそが教科書のようなものであった。ホントに年齢的にピッタリのよくぞよき時代に育ったものだと、自慢してみても、今の若いもんはわからんだろうなァ!! と、思ってもしかたあるまい。『完全復刻版 少年画報 昭和35年正月号』(少年画報社、本体五二三八円)が出た。よろこんで買ったのは誰か。もちろん、私もよろこび組だ。手に取ると、昔のままだった。少年の頃の感動と、この年齢になった今の感動と、どちらが上かというと、もしかすると、今のほうが上かもしれない。少年の頃は、「なつかしさ」なんてなかったが、今は「なつかしさ」による大感動である。
 〈月刊「少年画報」は昭和23年8月に明々社(のちの少年画報社)より創刊された「冒険活劇文庫」が前身であり、昭和25年4月号より「少年画報」と改題された。当時の少年雑誌の多くがA5判(現在の文藝春秋の大きさ)であったが、「冒険活劇文庫」は創刊時よりB5判(今の少年週刊誌)サイズで絵物語中心で読むより見せる事に重点を置いた新しいスタイルの少年雑誌であった。この「冒険活劇文庫」の成功に対抗し、秋田書店では「少年少女冒険王」を昭和24年1月に、集英社では「おもしろブック」を同年9月に創刊した。戦前から有名な講談社の「少年倶楽部」は「少年クラブ」と改題、昭和21年11月に創刊の光文社の「少年」と共に少年雑誌の戦国時代がはじまったのだ。〉(本書より)
 戦国時代ほど面白いものだ。とにかく、新しいスタイルは戦国時代を呼ぶものだろう。本書の昭和三十五年新年特大号の10大別冊ふろく、もなつかしい漫画ばかりだ。〈まぼろし探偵〉〈赤胴鈴之助〉〈ビリーパック〉〈豆パンチ〉〈イナズマ君〉など。そして、本書の〈さるとび佐助、福田三郎〉。他の少年雑誌の福田三郎作品は大笑いさせてくれるギャグ漫画であった。ギャグ漫画で笑わせてくれた漫画は福田作品が飛びぬけていた(今みても笑ってしまう)。本誌ふろくとも特価一五〇円だったことがわかる。その当時の一五〇円といったら、一冊きりだった。他の少年雑誌は買ってもらえないことになる。だから親しい友達と、交換しあって読みあったものであった。自分の本が誰の手にまわっているかわからず、もどってくる時は表紙がなくなっていた。表紙つきの本などめずらしいくらいだった。表紙がなくなっていても、中身の漫画で、なんという雑誌であるかすぐわかった。そういえば芸能雑誌であった「平凡」や「明星」なんてのも表紙のあるものはまれであった。表紙のない雑誌はそれだけ面白いということであった。年齢によって、あの頃はよかった!! という時代が異なるだろう。誰にでも、あの頃はよかった!! といえる時代があるだろう。あの頃の少年雑誌をなつかしむもの同志で、それを肴に一ぱい飲んだら話もはずむだろう。別に一ぱい飲まなくても……ね。







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