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評者◆秋竜山
はじっこにある日本国、の巻
No.2993 ・ 2010年12月11日




 今年も終わりか……。なんて、思いつつ(全然関係ないことだが)本を読んだ。東郷和彦『戦後日本が失ったもの――風景・人間・国家』(角川oneテーマ21、本体七四三円)。
 〈日本の風景は、古来から受け継いできた自然とそこで育まれてきた伝統である。自然と伝統の中にこそ、いかにグローバリゼーションが進行しようとも、日本にしかないほんものの価値がある。そういう風景を再興しながら、どうやって新しい日本を発展させるか。〉(本書より)
 日本という字を眺めていると、その文字の中から日本の風景が浮かんでくる。日本の風景とはどのようなものか。人それぞれだろう。頭の中にある日本の風景としての知識としての風景ということになるだろう。日本という文字をさらにジッと眺めていると、〈戦後日本〉という文字に変わる。それに対して〈戦前日本〉がある。でも、やっぱり、現実感のある日本を思う時、戦後日本という四文字のほうがピッタリしてくる。極論をいうと、〈日本国〉ではなく、〈戦後日本国〉が、日本国にピッタリだ。もしかすると国民は、日本国と呼ぶより、最初から戦後日本国と呼んだほうが好きかもしれない。暗黙の内にそう呼んでいるかもしれない。日本国を語る時、一人は戦前の日本を頭に置いて話し、もう一人は戦後の日本を頭に置いて話す。二人の間には、かみあわない日本の会話となってしまう。日本の風景を、〈真の風景〉を見るには、まず、日本地図を眺めることではなかろうか。日本地図そのものが、日本の風景そのものである。いつも見なれている日本地図、すなわち日本の風景にフッとギモンがわく。それはパターン化した見なれた日本地図の形である。果たして日本地図(日本の風景)をこれだけでナットクしてよいものかしら。地図を逆にして日本を眺めるという方法も必要ではないだろうか。逆さまにして眺める日本はなんとも不思議な形をしている。「これは日本ではない!!」なんて、いいたくなるような日本になってしまう。
 〈「江戸は、二百六十年の平和を象徴する。同時に、その平和は、武士という武装集団が責任ある力の配備をすることによって達成したものである。その結集として、当時の日本は、自然と人間生活が調和した、高度に発展した類いまれなる文化をつくったのである。しかし、江戸は鎖国の時代だった。私たちはいま、グローバリゼーションの下で、世界に開き、世界から吸収し、世界にうってでながら、そういうあたらしい日本を創ろうとしている」〉(本書より)
 日本地図には日本しかない。ところが、世界地図になると、世界中の国々の形(風景)がある。まず、日本国のちっぽけなこと。しかし、子供の頃は、日本は小さな島国だが、世界地図を見ると、地図の中央に堂々とある。なんて自信を深めたものであった。ところが、大人になってある外国の世界地図を見たら、なんと、日本は地図のはじっこに、かろうじてあるというあり様であった。そこで、世界地図というものは、いろいろな種類があることを知った。はじっこにある日本国も、それも日本の風景である。世界地図を逆にしてみると、またかわった世界の風景を見ることができる。







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