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評者◆秋竜山
笑う悪魔、の巻
No.2992 ・ 2010年12月04日




 「天使」とは何か? 「悪魔」とは何か? と、いわれると、「天使は天使で、悪魔は悪魔だろう」ぐらいしかいえない。天使は神のお使いで、悪魔は神に反逆ばかりしている悪そのものの存在だろう。なんて、わかっているのはその程度だ。「天使学」や「悪魔学」での学問での天使や悪魔については、よくわからない。吉永進一監修・造事務所編著『「天使」と「悪魔」がよくわかる本――ミカエル、ルシファーからティアマト、毘沙門天まで』(PHP文庫・本体六四八円)を読む。書店で文庫本としてみつけた。文庫なら手軽に気安く読める。家のどこかにブ厚い本で「ダンテの神曲」など、もぐり込んでいるはずだ。それをさがすには家中ひっくりかえさなくてはならないだろう。家のどこかにあることはある。けれど、どこにあるかわからないということは、ないことに等しいのかもしれない。考えてみれば、そんな本ばかりもっているようにさえ思えてくる。
 〈「キリスト教の三大文学」とは、第一は、ダンテの「神曲」(十四世紀の叙詩)。第二は、ミルトンの「失楽園」(十七世紀の叙事詩)。第三は、ゲーテの「ファウスト」(十九世紀の戯曲)。〉(本書より)
 悪魔には「西方世界の悪魔」と「東方世界の悪魔」がある。
 〈本書でいう西方世界の悪魔とは、欧米で支配的な信仰となっているキリスト教、およびそのキリスト教の源流であるユダヤ教で悪魔とされている存在のことである。そんな西方世界の悪魔たちの特徴は、明確に「善」と対立する者であるというところにある。〉〈本書であつかう「東方世界の悪魔」は、地域的には、北~東ヨーロッパ・ロシアから、西アジア・インドまでで、それらの地域で興ったゾロアスター教、イスラム教、ヒンドゥー教などの宗教世界における悪魔のほかに、原始の世界からのアニミズム信仰における悪魔的存在も、とりあげている。(略)積極的に人間を死へ導くことが使命である点においては、みな目的は同じといえるだろう。〉(本書より)
 東方世界の悪魔の恐ろしさは、弱い人間の心にとり憑き死へと誘う、という。強い人間の心にとり憑くのではない。弱い人間とは、〈ねたみや怠慢、強欲、不注意、不信心といった人間の心のスキを持つ〉人間であるという。人間である以上、誰でも持たずにはいられない弱味である。
 〈キリスト教では、笑うことは悪とされる。ロシア正教が広まったスラヴ地方でも「笑えば罪がふえる」「笑うところに罪あり」という意味のことわざが浸透した。ここでチョルトは神を嘲笑する者として「道化」と呼ばれるようになる。〉
 チョルトは人間の形をしているが小さい角と先のとがった尻尾、といったよく漫画に出てくる典型的な姿をしている。
 〈神聖な世界の対極には、高笑いから狡猾な笑いまで、さまざまな邪悪な笑いにあふれる悪魔の世界があるのだ。〉(本書より)
 大いに笑うべきだ健康のためにも、という。医学的に立証されているらしい。ウソ笑いでも健康上は笑ったことになるという。ハテ、笑いとは悪魔のしわざか。人間の笑う姿は悪魔の姿か。笑われる人間にとって、笑っている奴らは悪魔かもしれない。それでも笑うべきか。







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