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評者◆編集部
こどもの本棚
No.2991 ・ 2010年11月27日




きよしこのよる
クリスマスが
はじまります
▼じぐそーえほん クリスマス ▼クリスティーナ・グディングス 文/レベッカ・エリオット 絵/女子パウロ会 訳編
 あたたかい、はるのひのことでした。天使が神さまのおつげをしらせに、まりあさまのところにおりてきました。「あなたから、おとこのこがうまれます。いえすさまと、なまえをつけてね」。とてもすてきな天使のおかおでした。まりあさまのひざのもとには、こひつじがいます。そして、まりあさまはベツレヘムというまちへ、でかけていくことになりました。ろばにのったまりあさまと、たずなをひくよせふさま。ふたりはゆっくり、ゆっくりとでかけていきました。そして、まちについたまりあさまですが、とまれるへやがありません。「いっかいも、にかいにも、とまれるへやはありません。うまやだったら、あいてるよ」。こうして、いえすさまは、うまやでおうまれになりました。
 あかちゃんのいえすさまをみまもっているのは、まりあさまとよせふさまだけではありません。うしやひつじ、ふくろうやねずみ、ろば、にわとりにあひるまでいます。そらにはほしがかがやいていました。きよしこのよる、なんとすてきなほしあかりなのでしょう。そして、ほしのようにせかいをてらす、かみさまのみこをひとめみようと、やまをこえ、たにをわたり、とおいくにのおうさまたちがやってきました。ちかくのおかの、ひつじかいも、いえすさまをおがみにやってきます。こうして、いえすさまのたんじょうのおまつり、クリスマスがはじまります。このじぐそーえほんは、それぞれのページで、パズルとしてもたのしめる絵本です。(10・1刊、22cm×22cm 一二頁・本体一〇〇〇円・女子パウロ会)

孤児になった舞姫を
めぐる祈りと再生の
物語
▼アギーの祈り ▼濱野京子
 大きな戦争のあと、難民が集められた島、スサ島でのものがたりです。この島は、ふたつの大陸にはさまれた、カロレア海に浮かぶ小島でした。古来より交通の要衝として、いくども戦乱にまきこまれてきた島ですが、いまは南北大陸連盟の管理下におかれています。島全体は、さきの戦乱で家をうしなった者や、負傷してはたらくことがかなわない難民たちの集落となっていました。
 島の学堂のハルーン人女性教師アギーは、四人いる教師のうちの一人で、およそ六〇人いる子たちの面倒を見ています。子どもたちの大半は、各地の難民集落からかよってきます。そのうち一二人は身寄りのまったくない子どもで、学堂の裏手にある寄宿舎に住んでいます。新入りの少女ラキもその一人。ラキは孤児で、ここに来たときは餓死寸前、意識ももうろうとしていたんです。ようやく回復しても、ひとりぼっちで、みんなになじめません。でもアギーは、ラキが特別な舞いの才能をもっていることに気づきました。ラキは踊りたくて、踊りたくてしかたがない。ずっと踊っていられたらいいのに、と思うほど踊りが好きだったんです。だから舞踊班にくわわって、熱心に踊りの練習をするようになりました。
 でもじつは、ナキには一つの過去があったのです。テルン独立運動での戦闘のなかに、彼女はいたのです。ナキは、テルン独立を支援するマケラ軍に従軍し、そこで舞っていたのです。彼女は戦意高揚に使われた。けれども彼女の舞いは、祈りの踊り、死者たちを前にした弔いの踊りだった。そして、おりしも各国は、大戦中に兵士たちのために舞い、やがて姿を消したナキを追いはじめていた……。孤児になった舞姫をめぐる、祈りと再生の物語です。(11月刊、四六判二八六頁・本体一四〇〇円・偕成社)

おかしづくりに
めざめたとても
おいしいお話
▼まどれーぬちゃんとまほうのおかし ▼小川糸 文/荒井良二 絵
 まどれーぬちゃんは、おかあさん、おとうさんとはなれて、この町にひっこしてきた小学二年の転校生です。家には、年老いたロバのおばあさん、ろばあちゃんがいて、二人でくらしはじめました。そんなまどれーぬちゃんですから、おともだちはグースカくんしかいません。そんなまどれーぬちゃんに、ミツバチのブンブンが、お花畑のお礼にとハチミツをくれました。
 このハチミツのつぼをあけてびっくり、家のなかにあまくて幸せなかおりがひろがりました。ふときがつくと、台所のテーブルには、ミルクとたまごがあることに気づきます。ろばあちゃんは、プリンができるといいました。「てつだう!」。まどれーぬちゃんとグースカくんは、いっせいにこえをあげました。そうしてプリンができあがります。二人はむちゅうでたべました。そんなすがたを、ろばあちゃんはにこにこしながら、やさしいまなざしでみつめています。
 じぶんたちでプリンができる! まどれーぬちゃんにとっては、まるで夢のような発見でした。とつぜん世界がぐーんと大きく広がったかんじがします。プリンのつぎは、じゃあジャムをつくろう。そしてドーナツ、マドレーヌ……。まどれーぬちゃんは、おかし作りに夢中になりました。おなかも心も、いっぱい。そして、まどれーぬちゃんのマドレーヌが、おもいがけない奇跡をよびおこしました。とてもおいしいお話がつづきます。(10・12刊、A5判一二〇頁・本体一三〇〇円・小学館)

リュックをせおった
リスのぼうけん
▼ぼうけんしよう お金のせかい――キッズ生活探検 おはなしシリーズ ▼斉藤洋とキッズ生活探検団 作/森田みちよ 絵
 リュックをせおった主人公のリス、ミゲル。ふつうのリスは、リュックなんかせおってはいません。でもむかしむかし、たったいっぴきだけリュックをせおったリスがいました。それがミゲルなんですね。そして、ミゲルはだいぼうけんをくりひろげます。
 ある朝、ミゲルはのはらでオレンジ色のダイコンをみつけました。え? オレンジ色のだいこんって、それニンジンですよね。そうそう、ニンジンです。ミゲルはニンジンをひっこぬいて、どんどんたべました。たべられないぶんは、リュックにいれて、もってかえりました。するとどうでしょう、ニンジンはくさってしまいました。
 そんなある日、こんどはクルミをみつけました。クルミはくさりません。だから、川のちかくで会った茶色のリスと、クルミをあげるかわりにニンジンと交換したのです。このときミゲルは、交換ということをまなびました。
 そしてミゲルは、たびにでます。こんどはノネズミと会いました。そしてドングリをもらったのです。さらにミゲルはサル、フクロウと出会います。そして、いろいろなことをまなんでいくのです。
 ミゲルのぼうけんの寓話には、とくべつな意味がかくされています。交換ということをとおして、お金のしくみがあきらかになっていくのです。この本は、ミゲルのぼうけんから、ものがたりとかいせつをおりまぜながら、お金のせかいをわかりやすくおはなしします。おもしろく、ためになる、おはなしシリーズのはじまりです。(10・25刊、四六判九四頁・本体一三〇〇円・玉川大学出版部)


まるちゃんのタオル
つかってていいよ
▼まるちゃんのタオル ▼ささきようこ
 ちっちゃなこいぬの、まるちゃん。くろちゃんとはなかよしです。あるとき、まるちゃんのだいじなタオルが、なくなってしまいました。さあ、たいへん。いっしょにさがします。どこにあるかな、どこにあるかな。さがしたけどありません。するとどうでしょう。あった! ぼくのタオルだ。じつは、あかちゃんを生んだねこのももが、つかっていたのでした。もうちょっと、おおきくなるまで、このタオルをかしてくれるかしら。いいよ、とまるちゃんはいいました。あかちゃんがおおきくなるまで、がまんできるよ。どうぶつたちのやさしさが、つたわってきます。どうぶつをかわいがる気もちが、やさしさをそだててくれる。作者はそんな気もちをこめています。(10月刊、19cm×19cm 二四頁・本体九五〇円・ポプラ社)







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