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評者◆ベイベー関根
貴様等は断末魔で歌え!――若杉公徳著『デトロイト・メタル・シティ 第10巻』(本体五一四円、白泉社)、同著『みんな! エスパーだよ! 第1巻』(本体五五二円、講談社)
No.2987 ・ 2010年10月30日




 いやー、終わったね、『デトロイト・メタル・シティ』。映画にもなったし(メイキングの方が面白かったが)、ずいぶん評判になったみたいだけど、正直いうと、1巻以降は早くもマンネリって感じがしたもんで、この欄では取り上げなかったんだよな。ていうかさ、あからさまに出落ちじゃん。
 後は、根岸くんがどうやってヘビメタへの道に踏み込んだかを描けば話終わるなと思ってたんだよな。いや、フツー考えたら、そこが一番重要じゃん? あんなヘナチョコ男が(関係ないが、連載開始時点で、カヒミ・カリィに対する理解はずいぶん間違っていたな)、まあ折にふれ怒鳴り出すのはわかるとしても、なんでいきなりあんなメイクしてソフトロックにはありえない早いソロとか取り出すわけよ? そこがこの話の最大の謎にして、最大の山場でしょ。
 しかし、このマンガ、なかなかそこを描かないんだよ。なるほど、それで引っ張っていこうということか。しかも、たぶん本人もずいぶん前から飽きてたはずなのに、途中でいろんな盛り上げパターンを借用しながら、2度繰り返そうとはしない(お約束のギャグは別として)ところもエラかった。そして、この後どうするのかなと思っていたら、なんと、ヘビメタバンド加入の謎を明かさずに作品が終わってしまったのだ! ええー、そこブッチぎっちゃうの! とびっくりすると同時に、若杉公徳、意外に根性あんなあと感服して、今回とりあげることにした次第。エンディングもカッコいいぞ!
 さて、『DMC』最終巻と同時に刊行された『みんな! エスパーだよ!』1巻も、そうとうしょうもなくて面白い(『DMC』がしょうもないのはいうまでもない)。
 たぶん松江哲明『童貞。をプロデュース』の登場人物から名前をかりたと思しき高校生嘉郎くんが主人公で、ある日急に人の心を読む能力がそなわってしまった嘉郎はあわてたり、やる気になったり。しかし、どうも超能力をもち始めたのは嘉郎だけではないようだ。喫茶店シーホースを営むエロ親父、輝おいちゃんにはテレキネシス(念動力)、同級生の榎本にはテレポーテーション(瞬間移動)の能力がそなわってしまったのだ。嘉郎は自分の能力を世界のために使うことを考えていたのだが、あとのふたりは、自分の能力をエロ方面に利用することしか考えておらず、嘉郎はがっくり。しかも、ふたりは、東京から転校してきた美少女にして嘉郎のアイドル、浅見紗英さんをそのターゲットにしようとしている……!
 というわけで、超能力者集団が世界を救う、みたいなよくある話の中に、もし透明人間になれたらまず女湯覗くよね、という下世話な発想をもちこんだ作品で、輝おいちゃんと榎本の欲望のセコさには笑っちゃうよりないが、こういう人は憎めない、というより実際にはモテるような気がするな。あうあういってる嘉郎の心の叫び、「こんな能力があっても僕は結局なんもできんやないかっ」もなかなか深い、かも?
(セックスシンボル)







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