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評者◆磯崎新
啓蒙的近代をとび超え現代に甦った思索――初出のときとは違った意味あいが行間から浮ぶ
無窓
白井晟一
No.2987 ・ 2010年10月30日




 白井晟一が『無窓』にまとめた「エッセイ」の大部分を私はそれが発表された同時期に読んだ。氏の晩年、親和銀行のような大作が完成したときには、その建物を直接みて、勝手な文章を綴った。そして知己を得て直接に声を聞く機会を得た。この頃、氏は「書」を日課にされていた。筆をうごかす息づかいを感じとりたいと思ったが、はたせなかった。
 時を経て、建物のいくつかは姿を消した。関係者の努力で未建のものまでふくめて「図面」は記録されている。「書」は勿論保存されている。だが容易には接し得ない。手がかりがすくなく、白井晟一の姿が私たちの前からかなり長期に消えていたのである。
 『無窓』がこのたび復刊された。白井晟一のもうひとつの表現形式であった「エッセイ」をあらためて読むことができるようになった。執筆されてほぼ半世紀たってみると、初出のときとは違った意味あいが行間から浮ぶように思えた。要点をいえば近代化を啓蒙とみて走りつづける二〇世紀中期の日本を、前(プレ)近代の視点から、批判している。使われている言葉の用法は大正文化主義的である。だが長い西欧滞在の体験がありながら、日本の暗い土壌にすべての根拠を置こうとしている。こんな語り口を白井晟一は嫌がったと思うけど、彼はゴシックの真髄を『韮山の江川太郎左衛門...







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