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評者◆秋竜山
早く使いたい電話応対、の巻
No.2986 ・ 2010年10月16日




 営業電話が、かかってくる。ケッコウです!! と、ことわっても切ろうとしない。そんな時、こっちから切ってやれ!! と、思うのだが切れない。かかってきた電話だから、こっちから切るには、なぜか悪いような気がするからだ。「では、切りますから」と、何度もいっても切れない。むこうで、「わかりました」と、いってくれないからである。そんな時、まったく情けない自分が電話口にでていると思ってしまう。相手に、あやまっているのである。「スミマセン」と、いう言葉を発しているからだ。「スミマセン、切りますから」である。相手は次から次へと営業の話を続ける。続けられてもわからない。いったい何度、スミマセンをいえばよいのだ。それでも切ってくれないのである。かといって、相手に無言でガチャリと受話器を置かれると、ムショーに腹が立ってくる。養老孟司・内田樹『逆立ち日本論』(新潮選書、本体一二〇〇円)は、二人の対談である。電話のことがのっていて面白い。
 〈内田(例えば電話の営業で「もしもし、なんとか不動産の○○○ですけれど。今日は投資のご案内に……」というようなのがありますけれど、あの口調は完全にフラットですよね。)(略)。 養老 フラットな声というのは、嫌ですね。 内田 いくら丁寧な物言いでも、本人の身体が話している内容に同意していないと、必ずフラットになりますね。 養老 ああいう電話がかかってきたとき、「あなたはスピーカーじゃないでしょ」と。 内田 おっしゃってますか?  養老 言えない(笑)。〉(本書より)
 これを読んで、私も考えてみた。自分にいえるかどーか。「あなたはスピーカーじゃないでしょ」と。いえない。「スミマセン」と、さきにあやまって、「スミマセン、あなたはスピーカーじゃないでしょ」と、すればどうだろうか。これとて、いえないだろう。強引にむこうからかかってきた電話だし、切ろうとしないのだから、いってやればいい!! のだと、思っても、いえない。
 〈内田 ぼくは「いまちょっとお風呂に入っていますから」ですね。お風呂はだいたいオッケーです。「いま仕事している」と言ってもなかなか切れないし、「いま来客中で」でも「ではのちほどまた」と食い下がる。だけど、「お風呂」っていうと、「ああ、すみません」と向こうから切ってもらえる。(略)「お風呂じゃ、しょうがないな」と思えるように、相手のことまで気遣っているのです(笑)。〉(本書より)
 よーし!! 今度、これを使わせていただこう。成功しそうだ。早くやってみたい。電話がかかってこないか。待っている時は、かかってこないものである。〈内田 ぼく、声が高いんですよ。だからいきなり「お父さん、いますか」って訊かれることがある。そういうときは図に乗って「お父さん、いま出かけてます」(笑)。〉うん。この手は私も声が高いから、よくやる。知り合いの人によく間違えられる。そんな時、「本人です」と、答えると、むこうはビックリする。そして笑いあうのである。声というものは、いくつになっても変わらない。電話で「若い声をしてますねえ」といわれて、うれしがってよいものかどうか。「年老いた声をしてますねえ」なんていうわけがないだろう。







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