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評者◆鴻農映二
たまには草花の話で息抜きを……呉秉勲『生きて、息する植物教科書』好評
No.2984 ・ 2010年10月02日




 寺刹や遺跡については、これ迄、韓国内の主だったものを詳しく紹介した本が出ている。
 しかし、草花については、あまり、聞いたことがない。
 このほど呉秉勲氏が著した『生きて、息する植物教科書』は、そんな方面をカバーするガイドブックといえる。
 出版されるやいなや、朝鮮日報、中央日報、東亜日報が推薦する書店ベストセラーになった。百枚を越える草花の写真が掲載され、臨場感あふれる生態系ルポが、韓国の深山幽谷の風と香りを味わわせてくれる。
 草花については、日比谷図書館に行く途中、公園の花壇に眼をやった程度の記憶しかない私だが、この本を見ると、たちまち欲しくなった。
 どの写真も生々しくて、色気があるのだ。
 華鬘草の写真は、横一列に若い娘たちが並んで、一斉にお尻を剥き出しにしたエロティシズムがある。これに比べ、えごのきの写真は、真っ青な空を背景に、鈴なりになった純白の花びら、まるで清廉な乙女に不意に出くわした息を呑む爽やかさがある。かと思うと、291頁の坐禅草の写真は、これはクンニリングスの近さで見た女陰の赤みだ。
 写真ばかりでなく、文章の方も、たとえば、

「まるで巨大な壺の中に入った感じだ。四方を見渡しても岩の絶壁が囲んでいる。降りてきたところもそうだった。あんな険しい場所をどうやって降りて来られたのかわからない。下から見上げると、石を積んで築いた高い石垣を見るようだ」

 とある。両手・両足を使って、スパイダーマンにならなければ到達できない場所だった。しかも、帰りはまた上らねばならないのだ。無事帰れたのか心配になる読後感を、いつまでも引きずってしまう。
 著者は慶尚北道の尚州出身。1984年から植物分類学を学び、全国の山々や僻地、離島を踏査しながら自生植物を研究してきた。その成果を『人より美しい花の話』など20巻に纏めた。本書の日本語版が期待される。
(韓国文学)







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