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評者◆伊達政保
子供達の感性にダイレクトに対応する演奏――8月29日、札幌芸術の森野外ステージで「ノース・ジャムセッション北海道グリーン・ステージ」
No.2984 ・ 2010年10月02日




 8月29日、札幌芸術の森野外ステージ。今年のサッポロ・シティ・ジャズの末尾を飾る、「ノース・ジャムセッション北海道グリーン・ステージ」と題されたコンサートが行なわれた。「渋さ知らズ・オーケストラ」を始め、アルト・サックスの林栄一が加わる四つのグループが一堂に会して行なわれる、70分一本勝負の「林栄一オーケストラ蝦夷ヘンジ」、ほんの数日前の「すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」で、音頭取りとして素晴らしい音頭を聴かせてくれた河洲虎丸(トランペッターのミッチ)、永田充康(ドラム)が加わるニューオリンズ系のバンド「ミッチ・オール・スターズ」などが出演。オイラ何はさておき飛んでいった。
 コンサートのオープニング・アクトとして、小・中・高校生三十数名によるビッグ・バンド「チョビ渋」が、「渋さ」の曲を演奏した。その子供達の喜々とした演奏に、オイラ率直に感動しちまったのだ。聞けばこの「チョビ渋」、一週間前「渋さ」メンバーのワークショップからスタートしたという。札幌でのジャズ振興のため、今後は三年計画のプロジェクトとして、小・中・高校生を対象に楽器演奏ばかりでなく、ダンスや「舞踏」など「渋さ」の演劇的表現をも加えて、最終的には全国ツアーも企画しているという。これには本当に驚いたのだ。
 これまで日本の子供達のビッグ・バンドといえば、その基本はグレン・ミラー・オーケストラであった。サウンド、ハーモニー、スイング感、ポピュラリティのどれをとっても納得するものであり、その音楽はある時代のコンテンポラリー・ミュージックだったことは間違いない。指導教師の趣味によっては、その基本の上に現代音楽の影響を受けたガンサー・シェラー・オーケストラや、よりモダンなスイング感を求めてサド・ジョーンスとメル・ルイス・オーケストラの曲を取り入れる場合もあった。しかし、それでも現在のコンテンポラリー・ミュージックとは言い難かった。
 それに引き換え「渋さ知らズ」はジャズ、ロック、フォーク、歌謡曲などの様々なものが混在する、まさに現在のコンテンポラリー・ミュージックだ。また一斉に大きな音を出すという音楽の初源的喜びがそこにはあり、子供達の感性にダイレクトに対応するものとなっている。加えてアングラだ。表層文化から逸脱した文化表現としてのアングラが、現在の子供達の感性をどう解放するかが楽しみなのだ。それはまさにアングラの継承である。
 コンサートのラスト「渋さ」のステージに上がった子供達は、ダンスや舞踏に驚きながらも、最初はおずおずと、そして喜びにあふれた演奏となっていった。
(評論家)







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