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評者◆秋竜山
笑わせてからうならせる発明、の巻
No.2983 ・ 2010年09月25日




 あの当時、教科書に、〈発明家、エジソン〉と、のっていた。そして、学校の授業でおぼえた。発明家といったら、すぐエジソンである。いま、六十代あたりの人に聞いてみると、その通りであることがわかる。「発明家といったら……」「エジソン」。「エジソンといったら」「発明家」。十人の内十人が同じように答えるだろう。いまの教科書にのっているかいないかはしらないが、もし当時、教科書にのっていなかったら、いま答えられる人も、誰も答えられないだろう(それが、すごいことかどうかはしらないけれど)。発明とは、ナンセンスマンガである。いや、発明とはナンセンスであるというべきかもしれない。マンガは余計だったか。それでも、発明もナンセンスマンガも、「ひらめき」が命である。発明するということは、頭にツーンとひらめきが天から突きささるように授けられた瞬間であり、ナンセンスマンガのアイデアも、まったく同じ現象であるということだ。そして、その「ひらめき」だけが、もどかしいけれど、たよりである。もし、ちっともひらめかなかったら、話にならないのである。米原万里『発明マニア』(文春文庫、本体八三八円)では、米原さんの発明の数々、その追究が、そのアイデアが本となった。発明の追求であるから、ナンセンスの追求ということにもなる。そして、ナンセンス度が高ければ高いほど面白く、つい笑ってしまうのだ。笑わせたら発明としてしめたものである。週刊誌に連載されたものである。2003年から始まり、2006年まで119の発明である。
 〈「日々の暮しが少しでもよくなるために、一人ひとりがどのように生きたらよいか」米原万里が両親から引き継いだ人生の課題は、これであった。病いの床について動けなくなった彼女は、「うんとセコイ発明でこの世の大問題を解決できないだろうか」と夢想する。(略)。井上ひさし〉(本書より)
 とある。発明というものは、まず笑わせておいて、次にウーンと、うならせなければならない。そして、その発明品があまりにもバカ馬鹿しくあるが、バカ馬鹿しくないというものでなければならないだろう。〈58  いつでもどこでも賽銭箱〉というのがある。
 〈(略)自前の賽銭箱を持ち歩いて、行く先々の神社仏閣の入り口とか、参道あたりに置いておけば、勝手に賽銭を投げ入れる人が必ずあるものだ。これも考えようによっては、ありがたいサービスである。足元のおぼつかないお年寄りなどにとっては、駅から遠い険しい坂道や気の遠くなるほど多くの階段を上った先にご本尊がある場合、そこまで行かなくとも、お参りをすませ、心の平和を達成できるのだから社会福祉の一種と考えてもいい。というわけで、今回の発明は、折りたたみ式ポータブル賽銭箱である。〉(本書より)
 賽銭箱の不思議は、もし賽銭箱がどこかに捨ててあったとしても、それを見つけた人は、お金を投げ入れたくなるものである。
 〈賽銭の所有者になるのは多くの場合、神社仏閣の神主や住職など、人間なのだ。同じ人間なのだから、わたしだって、あなただって賽銭箱の所有者になれば、そこに投げ入れられる賽銭の所有者に合法的になれるではないか。〉(本書より)
 それを、実践できるかできないか、勇気と行動力だろう。バチがあたらないかしら……。







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