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評者◆編集部
こどもの本棚
No.2983 ・ 2010年09月25日




なんでもできるカードとおんがえし
▼りんごちゃんとビートルカード ▼中川ひろたか 文/酒井絹恵 絵
 ひとりでおさんぽをしていたりんごちゃん。するとどうでしょう。うしろから、かぶとむしのかたちのポンコツぐるまがやってきたとおもったら、エンストしてしまいました。さてさて、こまった。どうしよう。りんごちゃんは、のっていた4ひきのかぶとむしをてつだうことにして、おかのうえのガソリンスタンドまでくるまをひっぱっていきました。
 かぶとむしたちは、そのお礼に、こまったときにつかってと言って、ビートルカードをあげました。それは、まるでお守りのようでした。おおきな石がおちてきても、それを護符のようにはったうでで、ひといきに打ち砕いてしまいました。
 もう、りんごちゃんにできないことはありません。海をあるいて、おぼれているひとをたすけることだってできる。でも、油断しているすきに、5わの大きなワシにつかまれて、空中につれさられたんです。りんごちゃんは、ビートルカードでワシをおいはらったのはいいものの、空中から落ちてしまいました。そのとき、4ひきのかぶとむしが、おんがえしにきてくれました。迫力満点の絵がすてきです。(9月刊、縦24cm横23cm・三二頁・本体一二〇〇円・偕成社)

生きものはみんな
かみさまがおつくりになった
▼ともだちになった フランシスコとオオカミ ▼ロベルタ・グラッツァーニ 文/パトリツィア・コンテ 絵/わきた・あきこ 訳
 むかし、イタリアのまんなかあたりにある小さな町グッビオであった、ほんとうのお話です。町は森のはしにあって、冬はきびしく、夜がふけると動物たちがたべものをさがしに、森を出てきました。かわいそうに思った町の人たちは、小さな動物のために、家のドアのまえにパンのかけらをまいたり、たべものを用意してあげました。
 でも、飢えていたのは小さな動物だけではありませんでした。オオカミも飢えていたんです。群れをなして、町の人が飼っているヒツジをおそって、むさぼり食いました。そして町の近くに居ついてしまったのです。人びとはこわくてたまりません。男たちは町をでるとき、武器をもたなければならなくなり、女たちは家にとじこもりました。こどもたちも、外であそばなくなってしまいました。
 そんなある日のこと、ぼろをきた、やせっぽっちの修道士フランシスコが、町をとおりかかりました。そして、町の人びとがオオカミにおどかされているのを知りました。
 「わたしが、オオカミのところへいって、話してみよう」。
 でも、行ったらころされてしまう。町の人びとは、あぶないからと止めましたが、フランシスコはオオカミを諭しにいきました。
 ものかげからでてきたオオカミに、フランシスコはちかづいて、十字架をきりました。するとどうでしょう。オオカミはたちどまり、きばをむいた口をとじて、フランシスコのあしもとによこたわったではありませんか。
 しかもオオカミは人びととの平和を守ると、フランシスコにやくそくしたのです。そうして死ぬまで、町にとどまりました。もうわるいことはしなくなり、人びとはオオカミをきょうだいのようにかわいがりました。
 フランシスコは、オオカミだけではなく、キジバトも小ウサギも、ミツバチも、タカも、魚や虫たちもみんな、すべての生きものをだいじにし、きょうだいとよんで、わけへだてなく、やさしくあつかいました。なぜなら、どんな生きものも、みんな、かみさまがおつくりになったものだからです。オオカミにも、そのことがつうじたのでしょう。(9・1刊、縦24cm横21cm・三六頁・本体一三〇〇円・女子パウロ会)

八月のヒロシマ
遠ざかることのない記憶の物語
▼星夜行 
▼北森みお
 ヒロシマの路面電車、そして1945年夏の記憶をめぐって、この物語はながれていく。ある日、停留所にたたずむと、風鈴草が風にゆれていた。もう初夏の風がふいている。路面電車にのりこんだ。たまたま乗り合わせた人には、それぞれの人生があった。
 あるとき、真珠雲母をもっている女の人に、声をかけられたことがあった。「娘に似ているわ」。
 ふと、あの日のことを聞いた。9年前のあの日、たくさんの人が、この町で亡くなった。また行方不明になった。いまでも、たくさんの人が、人さがしをしている。尋ね人の広告もよく見かけるし、ラジオで行方不明の人をさがす番組もある。きっと、会うことのできなくなった親しい人たちの面影を、たまたま見かけた人に重ねるのだろう。わかるような気がする。私も、リンをうしなった。もう会えなくなってしまった。だから、リンに似た人に会ったら、きっと声をかけてしまうにちがいない。
 路面電車をめぐって、人びとの記憶が交わっていく。ことり、ことり――。耳の中で流星たちがソナタを合唱しはじめる。ことり、ことり――。波と岸のあいだで、星の弦がふるえている。あの夏の光がつくりだした影のなか、ひとりの少女と青白い人びとの想いが交錯する。再生をねがい、悲しみを軌道にのせて、路面電車はゆっくりと動きだす。遠ざかることのない、あの日の記憶の物語。(8・6刊、四六判一九二頁・本体一二〇〇円・パロル舎)

ネズミさんとモグラくん、ふたりのくらしはつづく
▼ネズミさんとモグラくんの楽しいおうち 
▼ウォン・ハーバート・イー 作/小野原千鶴 訳
 ネズミさんとモグラくんの家はとっても近い。ふたりとも、とてもきれいずき。まいにち朝になると、ふたりはそうじをはじめます。でも、モグラくんの家は、ネズミさんの家の下の穴ぐらで、ネズミさんのそうじしたほこりがぜんぶおちてくる。さて、どうしよう。ふたりはいっしょにそうじをすることにしました。するとどうでしょう。いつもの半分のじかんでおわってしまいました。そしてふたりは、お庭づくりをはじめます。そしていよいよ完成しました。モグラくんは、完成いわいをしようと、ネズミさんにしょうたいじょうをおくります。つづいて、ネズミさんもモグラくんにしょうたいじょうをおくります。暗いところがすきなモグラくん、にがてなネズミさん、さて、どんなぼうけんがはじまるのか、楽しみです。(7・29刊、縦21cm横15cm・四八頁・本体一三〇〇円・小峰書店)

アオムシ3きょうだいがクロアゲハになるまで
▼まけるなアオムシくん! ▼福山とも子 作・絵
 ミカンの木にクロアゲハがたまごをうみました。たまごから、つぎつぎに幼虫がうまれてきます。にいさん、ねえさん、ぼく。3びきはよりそって、おおきくなっていきます。
 はっぱのゆりかごのうえで、幼虫がスヤスヤとひるねをしていると、大カマキリが目をギラつかせてちかづいてきました。とりもねらいをさだめておりてきます。幼虫はちからをふりしぼってつのをだし、匂いをだして、げきたいします。たすけあいながら、「さあ、もりもり食べるぞ~」とミカンの葉をたべつづけて、ひとつひとつ、アオムシになっていきました。
 そしてまず、にいさん、それから、ねえさん、つづいて、ぼくのじゅんばんに、りっぱなクロアゲハになっていきます。3きょうだいはヒラヒラと、あおぞらにむかってとびたちました。あおぞらのむこうから、かあさんのこえがきこえるきがします。「みんな こっちよ」。たまごからクロアゲハになるまで、アオムシたちの成長のものがたり。(6・1刊、B5判三二頁・本体一二〇〇円・銀の鈴社)

いきかえったくじらのすてきなうた
▼きりんのカミーユ カミーユとすてきなうみのおくりもの ▼ジャック・デュケノワ 作/石津ちひろ 訳
 くじらのうたをききたかったカミーユは、うみのまんなかで、うたごえにおもわずうっとり。するとどうでしょう。くじらのこえが、なんだか苦しそうになってきた。くじらは、あぶらまみれで死にそうだった。カミーユはくじらのからだを、ゴシゴシ、ゴシゴシ、大そうじ。おなかのなかで、カミーユはうとうと、ねむってしまいました。くじらはすっかりげんきになって、ふかい海のなかで、カミーユのためだけにうたいます。すてきなうたを、ありがとう。(7・15刊、縦23cm横24cm・三二頁・本体一五〇〇円・大日本図書)







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