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評者◆山口二郎
人類史の大パノラマ――生活の中身を再構築することが、社会理論の根本課題となるであろう
世界史の構造
柄谷行人
No.2982 ・ 2010年09月18日




 著者はこの本について、「生涯で初めての理論的体系」と位置づけている。『世界共和国へ』(岩波新書)で提示された理念を、考古学、歴史学、哲学、精神分析など様々な学問の成果を用いて補強しながら展開した、まさに哲学の体系である。ただ、評者にとってはそれ以前に、哲学者が書いた面白い世界史という点に本書の最大の意義がある。
 高校時代に世界史を勉強して以来、歴史にはこういうものという自明の前提がたくさんあって、なぜという素朴な疑問は封印されてきた。本書を読むと、農耕革命の起源から始まって、普遍宗教と帝国の関係、中国において巨大な版図の帝国が王朝の交代にもかかわらず維持されてきた理由、そして二〇世紀においてロシアと中国で国家の形成のためにマルクス主義が必要とされた理由に至るまで、腑に落ちた。世界あるいは人類の歴史が、時間、空間を超えた大きな連関の中で展開してきたことが見事に描かれている。まさに、本書は人類史の大パノラマである。
 その体系性の根底には、交換様式から歴史を説明するという著者独自の発想がある。自己充足できないという人間の本性から出発して、ここまでのマクロな歴史像を描く構想力には感嘆するしかない。
 今日、高度に発達した資本主義が逆に人間の尊厳ある生を破壊していることは明らかで...







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