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評者◆ベイベー関根
ものを作る男たちに愛と半笑い(=半泣き)を――見ル野栄司『シブすぎ技術に男泣き!』(本体九五二円、中経出版)、同『敏腕編集! インコさん』(本体五九〇円、徳間書店)、野村宗弘『とろける鉄工所 4』(本体五八〇円、講談社)、同『ものものじま 1』(本体五二四円、小学館)
No.2981 ・ 2010年09月11日




 ここんとこさ、ちゃんと面白い発想ができる人に編集部がわざわざ身辺雑記ものばっかり描かせてるケースが目立つと思わん? 福満しげゆきはなんとか『生活』完全版を出せたからよかったけど、それで作家をツブしちまったら大問題だぜ、コレ!
 そういう意味で心配だったのが『とろける鉄工所』の野村宗弘で、1巻が出たときには、薄い! けど高い! ということは、部数が少ない! この先どうなる!! と行く末が案じられたものだ。読んでみると、前に勤めていた鉄工所での体験を基にしてるだけあって、ディテールの拾い方は当然のこと、キャラの造形も堂に入ったもので、やるねえと思う反面、みんな可愛らしい感じのキャラばかりで、もうひとつヒネリがなけりゃ、これをいつまでも続けるわけにもいかんだろと思っていたが、『ものものじま』1巻が出てくれて、まずはひと安心。こちらはもの作りを軸にしたほのぼのファンタジーといったところか。しかし……たぶん作者本人の人柄を反映してのことだろうが、こちらも出てくんのがなんかイイ人ばっかりで、話の作り方もそうパターンが多いわけでもなさそうだし、やっぱりもうひとヒネリが必要だ! 個人的には、『とろ鉄』4巻の花火のエピソードが妙に気に入ってるんだが、こういう感覚は忘れてほしくないなあ……。
 さて、『プロジェクトX』が終わって久しかれども、ことほどさようにモノを作る男たちが(女性も)エラいことに変わりはない。野村宗弘とは逆に、仕事の経験が後からネタになってきたのが見ル野栄司だ。見ル野といえば、『敏腕編集! インコさん』がマンガ業界を恐怖と苦笑のズンドコにたたき落としていることは読者の皆さんもご存知だろう。笑い飯のネタで……もとい、『スナック鳥男』でおなじみの鳥男が大手出版社のスチャラカ編集者になって帰ってきたのだ! いい面の皮なのは担当されるマンガ家の方で、原稿はなくされるわ、上下を逆に印刷されるわ、印税をピンハネされそうになるわ、まったく御愁傷様というほかなく、読者の半笑いは必至だ。もちろんこんなことが実際にあるはずもないが、見ル野が以前『スピリッツ』で短期間、あまり成功しなかったギャグマンガを描いていたことは付記しておこう。
 しかし、その見ル野が一方で10万部を超える作品をものしていたのだから驚きだ。もの作り現場のルポマンガ『シブすぎ技術に男泣き!』がそれなんだが、えええ! このページ数で、フルカラーで、それで定価が1000円? どうなってんの!? しかも、これフルカラーにする意味どこにあんの? まあそれはいいや。途中あからさまにPRマンガになっちゃってるところもあるが、読ませるのは作者の実体験を綴った後半部で、迫り来るキビシイ現実に、これまた読者の半笑い必至だ。へへへと笑いながら気がつくと、はっ共感の涙が……。それにしてもいくら文字が手書きでも、ちゃんと校正はしろよ、誤字だらけじゃねーか!
(セックスシンボル)







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