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評者◆秋竜山
矢印によって進む、の巻
No.2980 ・ 2010年09月04日




 大人物の一枚マンガは多くのテーマで描かれているが、〈矢印がテーマ〉であるマンガも万国共通のマンガ家の好きなテーマである。それだけに今まで沢山のマンガ家によって描かれている。と、いうことは、よっぽどのアイデアでなければ、認められないようなキビシイものだ。これは面白いぞ!! と、矢印〈↓〉を使ったマンガであっても、どこかの国のマンガ家がすでに描き上げたものであったりする。だったら、そんなキケン性のあるマンガなど描かなければいいだろう!! と、いう考えもあるが、だからこそ、描きたくなるのだ!! と、いう考えもあるということだ。無人島マンガのようなものである。私は無人島マンガをシューネンのようにして描き続けているが、考えようによっては、バカげたことかもしれない。矢印マンガばかり描いているマンガ家がいるのかいないのか、しらないが、もしも、いたとしたら、これもバカげたマンガ家かもしれない。池上彰『伝える力』(PHPビジネス新書、本体八〇〇円)に〈矢印を使い分ける〉という項目がある。
 〈ここ数年、ビジネスの場でも図解がもてはやされています。とりわけパソコンソフトのパワーポイントはよく使われるようになっています。(略)図解は急速に広がっていますが、不明瞭な図解も少なくありません。とりわけ感じるのは、矢印の使い方が曖昧なことです。矢印には、いろいろな意味があります。たとえば、「時間の経過を意味する矢印」「論理の流れを示す矢印」「因果関係を説明する矢印」などです。あるいは、単に、「デザインとしての矢印」もあるでしょう。〉(本書より)
 マンガの場合は、〈「デザインとしての矢印」〉の部類にはいるだろう。外国のマンガで有名なのは、砂バクのド真ん中に一人の迷い込んでいる男が、あるカンバンを眺めている。そのカンバンに矢印だけが描かれてある。その矢印には「ココ」という、いま男が立っている場所を指している。と、いうマンガ作品だ。矢印で「ココ」という場所はわかるが、その「ココ」が砂バクのどこなのかさっぱりわからないという内容だ。
 〈矢印を使う場合は、これはどういう意味合いで使う矢印か、ということを常に意識することが大切なのです。たとえば「時間の経過を意味する矢印」に「→」を使うとしたら、ほかの場面でも、時間の経過はこの矢印を使ったほうが受け手にはわかりやすい。 江戸時代→幕末の動乱と明治維新→明治国家の成立→バブル経済→失われた一〇年 といった具合です。〉(本書より)
 矢印というデザインを誰が考えだしたか、すごいとしかいいようがない。まさに矢が飛んでいるという形をデザインしたものだ。「↑」「↓」「→」「←」といった具合に矢は方向性を持って飛ぶ。先へと進むのであって、後へは進まない。この方向性を持つしめされた矢印によって、大群はその方向に進むのだ。では、日本の今後の進む方向はどこか。矢印が描かれてあり、国民はその方向へ進む。そして、その方向には何もない空間。矢印があったら、その方向へ進まぬわけにはいかんだろう。「いや、私は反対の方向へ進む」なんて、これを勇気とよべるのだろうか。わからない。







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