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評者◆秋竜山
写真の大革命?、の巻
No.2977 ・ 2010年08月07日




 笑え!! という。笑うことによって、ストレスを消すことができるからだ、とか。人間の一番いい顔は、笑っている表情であるとか。写真に写っている自分の顔。どれも笑っている。写真である以上、つくり笑いであることは間違いない。それを眺めて、いい顔であるかどうか。一番いい顔であるとは思わない。笑っている以上、悪い顔、あるいは気にくわない顔とも思わない。文句をつけても仕方あるまいという顔である。身びいきというやつか。いずれにせよ、世間では笑うという行為に対し、ゆるやかである。むしろ、笑え!! 笑え!! を強要しているむきがあるようだ。男は女のようにケラケラ笑うものではない。と、いう時代があったという。男のブスッ面が一番いい表情であるといわれた、のだと思う。男が強い時代であった。男が弱くなったと同じ時、男はやたらと笑うようになったような気がする。哀しむべき世の中であるか、ないかは知らないけど。小池龍之介『考えない練習』(小学館、本体一三〇〇円)では〈頭で考えずに、もっと五感を使おう。すると、イライラや不安が消えていく〉と、本の表紙のコピー。本書に〈笑う〉というコラムがある。
 〈たいてい、人の表情というものは煩悩によって動きます。特に笑顔は、しばしば何かをごまかすために用いられます。うまくいかない時、苦境に立たされている時に自分のガードする側面が強いのです。考えてみますと、人が最も幸せな瞬間というのは、すっきりリラックスした表情になっているのではないでしょうか。もしくは、穏やかな微笑です。(略)つくり笑いは自分をごまかす「無知」の煩悩によるものです。〉
 これは、ちょっと考えものである。写真における笑いの表情。すべて〈つくり笑いは自分をごまかす「無知」の煩悩によるものです。〉と、いうことになる。写真の自分の笑っている顔に限らず、他の人たちの皆同じように笑顔をつくっている、その表情は〈「無知」の煩悩によるもの〉ということになる。なるほど、そういう眼で写真を確認すると、みんな「無知」の煩悩による表情をしているように見えてくるから不思議だ。と、いうことは、今まで一番いい顔の表情が一番悪い顔の表情ということになってしまうということか。アルバムに貼られてある写真のすべてがそうである。写真を撮る時、必ず、そうしなければいけないかのように、笑い顔をつくらせて、パチリとなる。
 〈常に自分や相手の表情をよく観察しておけば、心に余裕が生まれ、心に余裕ができれば、自然と穏やかな微笑が浮かびます。自分がつくり笑いや大笑いをしていることに気づいたら、より穏やかな微笑の方向に持っていく。少し口角を上げて穏やかに微笑む程度であれば良いでしょう。〉
 微笑が一番いい顔ということになるという。微笑といえば世界的に有名なのは、あのモナリザの微笑。謎の微笑ともいう。謎とは何に対して微笑しているのか。モデルとして画家に対してのポーズなのか。あの表情がいいのかしら。だとすると、これから撮る写真は、あのような微笑の表情だらけの写真になってしまうのか。つまりは。「こいつ、いったい何を考えているのか……」という微笑みの表情ということか。これは写真の大革命ということになるかも……。







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