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評者◆ベイベー関根
全集で読みたいマンガ家ナンバーワン、古谷実。――古谷実『ヒメアノ~ル 第六巻』(本体五三三円、講談社ヤンマガKC)
No.2976 ・ 2010年07月31日




 いや~終わったね、『ヒメアノ~ル』。古いって?いいんだよ、どうせこういうペースなんだから!
 で、ネット上で、「主人公は森田だったのか」みたいなつぶやきを複数目にしたが、バカじゃねーの! ていうか、ナニ読んでんだよ! まあつぶやきだから実名は勘弁してやんよ。だけどさ、こないだ読んだ『ロスジェネ』4号だかで、杉田俊介がこんなこといってやがんのな。「古谷さんは自作の自己模倣を延々と続けるでしょう。その世界観の狭さと反復がすごく不気味でさ」「でも結局『ヒメアノ~ル』では最後まで決定的な出来事は訪れない。カタルシスばかりかカタストロフすらなくって、疲れてあっけなく警察に囲まれて終わり」とかさ。
 もう一度いう、ナニ読んでんだよ! 『ジョジョ』だの『HUNTER×HUNTER』だの『バガボンド』にうつつを抜かしてるヒマがあったら古谷実こそをちゃんと読むんだよ、批評家だったら! ナニが「自作の自己模倣を延々と続ける」だ、それが古谷が本物の作家である証しでなかったら一体何だってんだよ? それにあんだけ人が死んでるのに「決定的な出来事は訪れない」ってどういうことよ!?
 対する大澤信亮も「作品を変えて何度も悪意を描き続けるってどんなモチベーションなんだろう」とかほざいてて、それがどうも「シニシズム」に見えるらしい。あらためていう、ナニ読んでんだよ! 『行け! 稲中卓球部』のころから同じテーマを何度も繰り返し、そしてそのたびに少しずつ違う角度から粘り強く吟味してきた男をつかまえて「シニシズム」かよ! 古谷が実直に取り組んできたのは、お前らがその対談であーだこーだいってたまさにそのテーマだろーが!
 というわけで、作品の紹介もすっ飛ばして怒鳴ってしまったわけだが、んじゃ、以下簡単にお話を。
 上京して清掃の仕事をしている岡田くん、彼女ができず孤独でいることに強く不安を覚え、年上の同僚の安藤さんと話をしてみたら、安藤さんは恋をしているという。その相手、ユカちゃんの働くカフェにふたりで行ってみると、岡田くんは店に居座っている元同級生の森田を見つけ、声をかけるが逃げられてしまう。だが、森田は人を絞め殺すことに快感を覚える危険極まりない男だった。一方、ユカちゃんはいろいろあって岡田くんとつきあうことになるが、そのユカちゃんこそ、今森田が殺そうとつけ狙っている相手だった……。
 という具合の話で、都会の独身者の孤独とか、たいして取り柄もない人がいきなり美女にモテてしまう不思議(というより罠)とか、平凡な暮らしと激ヤバな事件との対比とか、『ヒミズ』以降の3作にはかなり似た構図が見てとれるわけだけど(最後以外は古谷全作品に共通)、『ヒメアノ~ル』の特徴は、岡田くんと安藤さんと森田という3つの視点からものごとが捉えられていることで……おおっと、もうスペースがない、続きはまたどこかで! 人をさんざん罵っといてこの始末とは、そりゃヒドい!
(セックスシンボル)







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