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評者◆秋竜山
お願いだから説教させて下さい、の巻
No.2976 ・ 2010年07月31日




 声というものは人様々である。大きな声、小さな声。私は大きな声だといって、「もっと小さな声で話せないのか」と家の者に叱られたりする。大きな声で話そうとか、小さな声で話そうという意識はまったくない。フツウの声で話しているのに、まるで怒っているような大きな声だと注意される。相手は叱られているような気分になるだろう。家の者同士ならガマンもできるだろうが、これが他人であったら、たまったものではないだろう。喫茶店などでの話は、相手には大変メイワクをかけることになる。名曲喫茶というのが沢山あった頃、大きな話し声ゆえ店内の知らない客に「シー」「シー」いわれた。しばらくは声をひそめるように話すのだが、その内に忘れてしまって、また元にもどってしまった。小さな声。蚊のなくような声というか。相手の話している声が全然聞えない。仕事で何回も会っているが、まったく喋っている内容が伝わらなくて困ってしまったことがあった。大きな声と、小さな声の会話だから、今思い出してみても漫画のような場面であった。友澤晃一『演じる心、見抜く目』(集英社新書、本体七〇〇円)では〈演出家でもある著者が、「役者の演技」を通してアドバイスする。〉人間を演出するプロというべきか。大きな声、小さな声、というのは書かれてなかったが、〈第2章・素直に話せる人・素直に話せない人〉その項目に〈頭の固い人は「経験」を語る〉。そのものズバリであろう。
 〈できれば、生きているかぎり「今という新しい経験」をし続けてもらいたいものです。いずれにせよ、「経験だけにすべてを頼るのは危険である」という意識が希薄になったときに、あなたは頭の固い人と呼ばれ、「あのヒト、言葉通じないから」「会話になってないんだけど…」などと陰口を叩かれるのです。〉(本書より)
 頭が固いというイメージは、よくない。頭が柔らかいといわれて怒る人はいないだろう。オヤジは頭がどうしても固くなってしまう。
 〈彼らの発する言葉は、何かに対する怒りや、相手への強制や、自分の保身などに関連した[一つの大きな感情によって、本来なら伝わるべき言葉の細部に隠された多くの小さな感情を消してしまい、結果的には、大きな感情だけが相手に伝わる]ということが多いのです。だから相手は「オヤジ、なに熱くなってんだよ」とか「るせエオヤジだな…」などと、送信側の言葉にうるささだけを感じたりするのです。〉(本書より)
 オヤジという呼び名のひびきがよくない。オヤジといえばすぐ説教ということになる。オヤジ同士が説教しあうなどということはないだろう。また、自分より目上のものに説教するということもない。どうしても、説教の相手は年下のもの。それも若いものだ。オヤジという年齢に達して初めてわかることは、若いものをみると、すぐ生理的に説教したくなるというものだ。説教せずにはいられない。その感情をおさえることができない。それが、オヤジというものだ。たとえ、オヤジの説教はウザいんだよ!! なんて馬鹿にされようが、説教したくなる年齢であるからしかたがないだろう。早い話が説教のできないオヤジってミリョクありますか。……ハテ?







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