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評者◆池田雄一
歴史であり音楽であるような語りから――飛翔と下降のリズム、その上下運動のうねりをキャッチせよ
MUSIC
古川日出男
No.2972 ・ 2010年07月03日




 原則論になるが、作品の媒体としての言語は、自分ではない何かを指し示そうという方向性と、自分じしんが作品であろうとする方向性、ふたつの方向へと向かう傾向がある。前者の方へと舵をきれば、作品は「歴史」というジャンルに限りなく接近することになるし、後者へと向かえば、それは「音楽」のようなジャンルへと近づくことになるだろう。歴史そのものとしての作品は、自然主義の小説に典型的にみられる。そのような作品イメージの対極にあるものとしては、那珂太郎による文字どおり『音楽』というタイトルの詩があげられる。歴史と音楽の方向性は、文学において散文と韻文の対立として具現化されることになる。そして作家としての古川日出男が特異であるのは、歴史であると同時に音楽でもあるような作品をつねに作り続けている点にある。
 かぎりなく歴史に近づいていこうとする言葉と、かぎりなく音楽であろうとする言葉、古川日出男の小説においては、これら違った方向性をもった言葉が、矛盾をきたすことなく総合されている。そのような作品は一般的に「叙事詩」と呼ばれている。その一方で、彼の作品においては、犬や猫やカラス、少女や少年というような、およそ叙事詩的な語りには似つかわしくない匿名性をおびた者たちが登場する。これらの者たちは、叙事詩や...







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