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評者◆秋竜山
腰にゆわえてエンヤコラ、の巻
No.2970 ・ 2010年06月19日




 「インチキ」という言葉の中に、「何が?」という反応がある。見過ごしたり、見のがすわけにはいかない。小谷野敦『日本文化論のインチキ』(幻冬舎新書、本体七八〇円)では、タイトルに〈インチキ〉という文字が使われている。やっぱり気になるものだ。ヤジ馬精神によるものか。インチキのホコ先きが〈日本文化論〉ということだ。「そーかしら?」と、いう気になってくる。読んでみなくては〓 と、なる。
 〈よく人は「まったく、日本人てえのは……」というようなことを言う。中年のおじさんの(というか私も中年のおじさんだが)決まり文句のようなものだ。しかし、それはたいてい、日本人だけの話ではない。たとえば、藝能人のスキャンダルで大騒ぎしているのを見て、「まったく、日本人てえのは」と言うとする。しかし、それは他国でもあることだ。人は不思議なまでに、そういう時に思想停止して、他国にも同じようなことはあるのではないか、と考えるのをやめてしまう。〉(序文にて)
 ハハハハ……よく耳にする言葉だ。「まったく、日本人てえのは……」よく考えてみると、自分も言っていたりするものだ。〈「日本文化論」には、外国のことを知らなければ知らないほどに、だまされやすい。「日本では……」と言われて、いや、外国でもそうじゃないか、と考えるだけの知識がないからである。〉あらゆる面で日本より外国のほうがすぐれているように思えてくる。戦争に負けて、日本人は自信をなくしてしまったからか。戦争に負ける以前はどーだったんだろうか。あの「黒船」を目撃した時点で、「まったく、日本人てえのは……」なんて、つぶやきのようなものが、うまれたのか。本書の面白かったのは、〈裸体と日本人〉の項目。
 〈日本では明治四年(一八七一年)に、下半身の露出を禁止する法律が出ており、それを見ればある程度は、裸体に関して寛容だったのは事実だが、男が女の裸を見ても何も感じないなどということはない。裸体というのは、シチュエーションによってさまざまな意味を持ち、授乳の場合は授乳であるということでエロティックな意味がかなり殺がれるのである。〉(本書より)
 〈日本では明治四年(一八七一年)に、下半身の露出を禁止する法律が出ており〉と、あるがそれ以前には法律がなかったということか。下半身を露出しても法律はきかなかったのだろう。それで思い出したのは、私が青年(漁師)に成り立ての頃、村の老人に聞いたのだが、「昔は、漁師は素っ裸になって、オチンチンをワラでしばって腰にゆわえて漁に出たものだし、路上を歩きまわったものだ。今はそんなことやる馬鹿ッチョはいねえけど」なんて言われてビックリしたものだった。親父にも同じようなことを聞いたものだ。「千葉の漁師が温泉場(伊東市内)へ船で入ると乗り組み員数名がスッポンポンで、オチンチンをヒモでゆわえて腰にまわして、ブラブラしないようにしていたぞ」と、言われた。親父が青年の頃だから昭和の初め頃だったろう。そんな姿で温泉場を歩かないようにしてほしい!!などと、青年会で話し合ったとか。これにもビックリした。私が漁師の頃はそのような恥ずかしいことはしなかったから、昔でなくてよかったなどと、思ったものだ。







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