書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆ベイベー関根
萩尾望都が還暦な件。――萩尾望都著『スフィンクス』(本体五〇五円、小学館フラワーコミックス)
No.2962 ・ 2010年04月17日




 みんな吉田秋生の『海街diary』をホメるけどさー、そりゃ素晴らしい作品には違いないけど、吉田秋生があれくらい描けるのはトーゼンのことじゃん! ていうか、もともとの資質はこっちの人だと思うけどなー。ホントいうと、ああいうのよりも、父親がいて母親がいて思春期の子供がいて、でなおかつスゲー読ませる、つまり骨太ホームドラマこそ必要なんじゃねーのと思うけど、どう? 家族が崩壊したとか、そんな話は聞き飽きてんだからさ、ガッツリしたホームドラマを今に成立させるための父親像とか母親像を作ることの方が難しく、しかもやりがいのある仕事なんじゃねーの。
 いやまあそれはおいとこう。ところで、吉田秋生もエラいが(そのことを認めるにはジンゴに落ちないよ)、萩尾望都もエラい。なんせずーっと名作ばっかり描いてきて、ふと気がついたらもう還暦なんだもんな! びっくりしたぜ! そりゃこっちもトシをとるわけだ。なに、『ケーキケーキケーキ』がハタチのころだと? それからもう40年? くわー! なんてこった!(しかしそれは10年前にも20年前にも感じたことだ)それにしても萩尾望都にしても、一条ゆかりにしても、くらもちふさこにしても、このへんの出身で今も現役の人たちの才能と努力はホントにスゴいね、完全に脱帽だ(まあちょっとヨレてきてる人もいるけどさ)。
 で、萩尾望都のどこがエラいかというと、昔名作を書いたからではなくて(でも、こないだ『ポーの一族』読み返して、超号泣した)、今描いてる作品が素晴らしいからに決まっとる。萩尾作品がサイコサスペンスとその隠喩としてのSFを中心にするようになってからけっこう経つが、基本的な少女マンガの語法は変わらないよね。というか、あえてそこにとどまって、いろんな人間たちを描こうとしているように見える。『残酷な神が支配する』や『バルバラ異界』みたいな、「フツー」から離れて立つことで見えてくるものもあるが、日常に近いところ(しかしリアリズム一辺倒でもない――おそらく非日常やフシギさをすくいとるために少女マンガの語法が活用されている)で見えてくるものもあるのでは、という発想から始まったのが、この「ここではない★どこか」という短篇連作シリーズなんじゃないかと思うんだけど、2年半前に出た1冊目『山へ行く』(巻末「柳の木」に、またもや手もなく泣かされた)にしても、去年の年末に出た『スフィンクス』にしても、それだけじゃないね、やっぱり。連作全体では生方という小説家を狂言回し的に使っているけれど、それ以外のアイディアもどんどん入ってくる。『スフィンクス』の表題作では「オイディプス王」が再話されるが、物語上はそれほど独創的な解釈があるようでなくとも、このカバーはどうよ。うう~ん。小品集かと甘く見てると、イタい目に遭うぜ。つーか萩尾さん、ラマチャンドランまで読んでんのか。オッソロしいね、やっぱ。
(セックスシンボル)







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約