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評者◆伊藤氏貴
王太郎の王道――「物語」から外へ出ないように心掛けながら、近代文学の問題と最前線で戦って見せたが……
ビッチマグネット
舞城王太郎
No.2958 ・ 2010年03月20日




 これほど活躍していても、やはり芥川賞というものは欲しいものなのだろうか。覆面作家であることを頑なに通し、楽屋裏の話を一切しない舞城王太郎が、この度受賞を逃したことについてどう思っているのかは知る由もない。ただ、今回は狙っていたのではないかと私は思うのである。
 「狙う」という物言いがはしたないとすれば「賞を意識して」と言いかえてもよいかもしれない。いずれにせよ、舞城は彼のとりうるあまたの選択肢の中から、あえて純文学の王道とも言える途を選んできた。
 もちろんあの饒舌な文体はあいかわらず彼のものである。しかし、ミステリーにも非日常にも走らず、家族や恋愛や性にまつわる問題を正面からとりあげ、しかもそれに悩む主人公を一人称で内側から描くことにより、一部の人間によればもはや「亡びた」とされる、近代文学の方法としての〈内面〉へのこだわりを見せる。近代文学だってまだまだいけるんだと言わんばかりのふるまいを、主人公の香緒里は見せつけるのだ。
 まず、父親が愛人をつくって家を出ていったことに対してわだかまりを抱えているという設定がいかにも近代文学くさい。年子の弟、友徳も当然そうした父を快くは思わず、百億円あったら父の愛人に手切れ金をつきつけて父親に家に帰ってきてもらおうと言うが、それは父へ...







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