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評者◆秋竜山
どーでもいい大人、の巻
No.2955 ・ 2010年02月27日




 「アーアッ。みんな私が悪いのよ!! 郵便ポストの赤いのも、みんな私が悪いのよ……」と、いった時代があった。そんな郵便ポストもなくなってしまった……。みんな私が悪いのよ!! と、自分をせめて何になる。元々そんな自分であったのだ。そんな自分なら、他人をせめるしかないだろう。昔は器の大きな人間もいたけど、今は器の小さい奴ばかりだ。今は駄目な奴ばかりだ。昔の人間は、すごかった。福田和也『人間の器量』(新潮新書、本体六八〇円)は、日本人の器が小さくなってしまったことを読ませる本である。
 〈大きい人がいなくなりました。人物というべき人がいない。日本中、どこを探しても。一体全体なぜ、人材がいなくなってしまったのか。その原因はいくつもあるでしょうが、一番の理由は、育てて来なかったから、明確な意識をもって育てようとしてこなかったからにほかなりません。人物を、人材を育てようとしてこなかった。〉(本書より)
 そーか。そーか。そーいうことか!! 〈戦後教育の結果が、このざまです。〉と、本書で著者は、そー述べている。「俺ァ、知らねぇ知らねぇヤイ、責任者は前へ出ろ!! コツをくれてやる」と、誰もがいう。そーいう自分も責任者の一人であるくせに……だ。本書の面白いというか売りの名文句は〈なぜ日本人はかくも小粒になったのか〉も、その一つである。
 〈死を受け入れるためには、私たちの器はあまりにも小さくなってしまったのでしょうか。このように言うと、戦争にしろ、貧困にしろ、病気にしろ、無い方がいいに決まっているではないか、と批判されるかもしれません。もちろん、そんな事はないに越したことはないのです。なければいいのは事実なのですが、しかしまた別の側面で戦争、貧困、病苦がなくなった途端に、日本人の器が小さくなったということも事実としてあるのではないでしょうか。〉(本書より)
 本書では〈器量人十傑〉を取り上げている。〈[明治]1)西郷隆盛 2)伊藤博文 3)勝海舟 4)大久保利通 5)横井小楠 6)渋沢栄一 7)山懸有朋 8)桂太郎 9)大隈重信 10)徳富蘇峰 [大正・昭和戦前]1)原敬 2)髙橋是清 3)菊池寛 4)松下幸之助 5)今村均 6)松永安左衛門 7)鈴木貫太郎 8)賀屋興宣 9)石原莞爾 10)小林一三〉と、なるわけだ。サテ、問題?は戦後から今日まで、である。どのような器量人が本書で上げられているか。いや、違う。そーじゃァないだろう!! なんて意見もでるというものだ。そーいう人こそ器が小さいと笑われるかもしれない。
 〈[戦後から今日まで]1)岸信介 2)田中角栄 3)小林秀雄 4)小泉信三 5)山本周五郎 6)田島道治 7)本田宗一郎 8)吉田茂 9)宮本常一 10)石橋湛山〉(本書より)
 器量を大きくできるのは何から学べばよいのか。器量の小さい人間から学べるはずがなかろう。それには本書でいっているように、
 〈器量が大きい人間を見る事、その生き方について思いを馳せる事が大事でしょう。〉(本書より)
 一番てっとり早い学びかたとしては、NHKの一年間を通しての大河ドラマに仕立てること。この十傑の中から、誰がいいかアンケートをとること。サテ、誰か、となると、どーでもいい人物ばかりのような気がしないでもない。







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