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評者◆鴻農映二
手話通訳、金庭賢が激務の最中、詩集出版――詩集『影にも色彩がある』
No.2950 ・ 2010年01月23日
韓国内の聾唖者の数は、35000人。これに対し、手話通訳で、その不便な暮らしを少しでも軽くする人材は、500人だ。うち、200人が自治体と契約し、第一線で活躍している。
ソウル市では、17の区に通訳者が常駐。今度、冠岳区から九老区に移った20年のキャリア、金庭賢(キム・ジョンヒョン)女史に話を聞いた。 「字幕つきのテレビが発売されていますよね。聾唖者向けに開発したといいますが、そういう付加価値の付いたテレビは、値段が高いんですよね。お金持ちの聾唖者しか買えないんです。ところで、お金持ちの聾唖者なんて、いったい、どれだけ、いるでしょうか?」 「だから、字幕付きの外国映画ばかり観る。その影響で、聾唖者は、意外と健常者より、意識が進んでいるんですよ。健常者が聞くと、びっくりするかもしれませんね」 「ケータイの出現で、随分、聾唖者の生活の質が向上しました。震動モードで、電話を受け、メールのやりとりはもちろん、動画で手話で対話します。ポケベルの時代は、数字を暗号化し、その数字を見て、どこで、何時に会うか意思の疎通を図っていたんですよ」 こうした文明の利器の恩恵はあっても、それでも、聾唖者たちの不便さは、言葉の通じない外国人以上だ。外国人とは「ハロー」「サンキュー」程度は通じるが、健常者は、それに該当する手話すら知らない。自然、金庭賢ら、手話通訳の仕事は、多忙にならざるをえない。病院や銀行に付き添って行くだけでなく、聾唖者のための文化イベントや、牧師の説教の通訳も担当しなければならない。 そんな自分の立場を、金庭賢は、「影」と規定する。「きょうも/あなたの耳と口になるために/家を出ます/あなたが/前を歩くと/わたしは影になり、随いていきます」という具合だ。手話通訳を歌った文学作品は、おそらく、彼女が史上初だろう……。 (韓国文学) |
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