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評者◆秋竜山
はい、成功、の巻
No.2948 ・ 2010年01月01日




 読んでいて気持のよくなる本。こうありたいものだ!! と思わせてくれる。「天は自ら助く物を助く」という諺。有名すぎるほど有名だ。サミュエル・スマイルズ著、中村正直=訳/渡部昇一・宮地久子=現代語訳『自助論――西国立志編(上)』(幸福の科学出版、本体一二〇〇円)は、その有名すぎる格言から始まる。いったい、これはどういう意味なのか。あまり有名な言葉というものは、何も考えずにわかった気分になってしまうものである。なんとなく、わかったムードにさせてしまうからだ。そして、ある時、フッと考える。「ハテ? これはどういう意味なのか」。ムードでわかったものは、ムードでわからなくなってしまうもののようだ。
 〈「天は自ら助く物を助く」という諺は、経験上確かな格言である。たった一句の中にすべての人類の成功と失敗の経験を包含している。自分自身を助けるというのは、よく自主自立して、他人の力に頼らないということである。自助の精神は、人間の才智が生まれてくるための根源である。(略)他人の援助を受けて成就したものは、その後、必ず衰えてしまうことになる。これに反して、自分自身の力で成し遂げたことは必ず発展して、妨げることを許さないほどの勢いがある。〉(本書より)
 「ウム!! なるほど」と思わせてくれる。ところがこの文章に続きがある。それも驚くべきオチのような内容である。ドスンと落とされたような気分になってくるのである。これとても自助の精神なのか。
 〈思うに、自分が他人のために多くの援助を行えば、必ずその人が自分自身で励み勉める気持ちを削いでしまうだろう。そのような理由により、上に立つ人物の厳しすぎる指導は、その子弟の自立の志を妨げることになるし、下々の者を抑圧する政治や法律では、人民が経済的自立を失い、活動力を弱めてしまうことになるのだ。〉(本書より)
 このままでは、どーなってしまうんだろう……と、新聞やテレビのワイドショウの政治コーナーを観て、本当のカラクリのようなものは、なんなのか!! なんて、考えてしまう。わからない。そして、わかるのは国民の不景気にあえぐ姿だ。
 〈今日本は、不景気だと言われ、何かにつけて政府から施し物をもらおうという気風があります。その中にあって自らを助けようという気概を持つ人が減れば、すでにスマイルズが150年前に指摘したように、国力は減るのです。また逆に、自助努力する人の数が多ければ、その国、その社会も栄えるのです。これは人間社会の変わらない鉄則であると思うのです。中村正直の訳は、殿様から扶持をもらうのを中心とした封建社会が終わった時、自ら立って生きるという道を示した北極星のような大きな導きの星であったのですが、近頃再び近寄ってきた〝お上に頼る思想〟の中にあって、同じ導きの星の役目をしてくれるのではないかと期待している次第であります。〉(本書、まえがき、渡部昇一)
 いつの時代でも成功者はいいよなァ!! 成功者の話って、最後に必ず、成功してしまうようにできているから、めでたし、めでたし、となる。だから読んでいて気持がよくなるのだろうか。成功者が成功者の本を読んで、どー思うかしら。







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